社内不倫の慰謝料請求と社内不倫のリスクとは

浮気・不倫相手との出会いの場は、職場が一番多いと言われています。

実際に受けている浮気・不倫の慰謝料に関する法律相談でも、半数以上が職場関係者とのものです。

この記事では、次の2点をご説明します。

  • 社内不倫における慰謝料請求について
  • 社内不倫のリスクについて

社内不倫の慰謝料請求

配偶者の社内不倫が発覚したからといって、当然に慰謝料がもらえるわけではありません。

大前提として、請求する側が社内不倫の事実を証明しなければなりません。

浮気・不倫は、LINEやメールのやりとりを配偶者に見られることによる発覚が大多数です。

ここでは、配偶者の社内不倫が発覚した際の慰謝料請求についてご説明します。

慰謝料の請求先は配偶者と不貞相手

不倫による慰謝料とは、不倫により受けた精神的苦痛を償うために支払われるものです。不倫をした配偶者と不倫相手が連帯して責任を負います(民法第719条1項)。

よって、慰謝料は配偶者と不倫相手のどちらか一方へ、またはどちらへも請求できます

不倫慰謝料の相場

不倫による慰謝料の算定には明確な基準がありません。

そのため、弁護士が交渉に介入する際は、判例を参考にします。

裁判上の慰謝料の相場は次のとおりです。

では、社内不倫の場合、慰謝料算定にどのような事情が考慮されるのでしょうか。

次の3つのケースを例にご説明します。

  • 慰謝料請求者と不倫相手とが同じ職場の場合
  • 不貞相手も既婚者でいわゆるW不倫の場合
  • 不貞相手がアルバイトなどの未成年の場合

慰謝料請求者と不倫相手とが同じ職場の場合

夫婦と不倫相手が同じ職場で勤務している場合、不倫相手は当然に既婚者と知りながら交際していることがほとんどです。

よって、慰謝料請求の可否は、夫婦の婚姻関係の破綻が争点となります。

婚姻関係の破綻とは、夫婦双方が婚姻関係を継続する意思を失い、夫婦関係の修復の見込みが著しく困難な状態を指します。

具体的には次の事情が考慮されます。

  • 不貞行為時、夫婦の婚姻関係が破綻していたかどうか

破綻していた場合(別居していたなど)→ 慰謝料請求は認められません。

破綻していなかった場合(夫婦生活を送っていたなど)→ 慰謝料請求が認められます。

  • 不貞行為により婚姻関係が破綻したかどうか

破綻した場合(別居や離婚に至ったなど)→ 慰謝料額の増額事由となる

破綻までは至っていない(同居継続など)→ 慰謝料額の減額事由となる

なお、当事者の職場が同じ場合、慰謝料が比較的高額になる可能性があります。

精神的苦痛の程度や、職場への影響が増額事由になるためです。

不貞相手も既婚者でいわゆるW不倫(ダブル不倫)の場合

W不倫が発覚したが、離婚はしないという場合は、要注意です。

不倫をされた配偶者は、それぞれの不倫相手へ慰謝料請求が可能です。

しかし、それぞれの夫婦が離婚せずに同額を請求すると、夫婦の家計は同一と考えられるため、相打ちとなります。結果として獲得する慰謝料額は家計全体でみると0円となります。

W不倫の際、上の図の不二子が慰謝料請求をして金銭的なメリットを得られる場合は次のようなケースです。

  • 不二夫に愛之助と愛子の不倫の事実が知られていない場合
  • 不二子と愛之助は離婚するが、愛子と不二夫は離婚しない場合
  • 不二子ら夫婦の方が、愛子ら夫婦より婚姻期間が長い場合
  • 愛子の方が不倫に積極的だった場合 など

これらの事情がある場合は、相手夫婦よりも高い慰謝料額が認められる可能性があり、金銭的メリットもあります。

W不倫の場合、慰謝料請求をするかは慎重な検討が必要です。

不貞相手がアルバイトなどの未成年の場合

配偶者が飲食店などで勤務する場合、不貞相手が学生アルバイトの未成年者というケースがあります。

未成年者であっても、責任能力が認められる限りは慰謝料の支払義務を負います(判例では12歳程度で責任能力を認めたものがあります)。

ただし、未成年者に慰謝料を請求する場合は次の点を考慮しましょう。

  • 未成年者の責任能力が認められる場合は、未成年者の親に支払い義務はない
  • 未成年者との間で慰謝料を支払う契約をする際、親権者となる両親の同意を得ていなければ、契約をしても後に取り消される恐れがある(民法第5条1項、2項)
  • 一般的に精神的に未成熟な未成年者に手を出したとして、不倫をした配偶者の方が責任負担は大きい
  • 一般的に高額な慰謝料は望みにくく、回収が長期化する

慰謝料の請求先が未成年者の場合は十分な検討が必要です。

不倫再発防止の誓約の取り付け

社内不倫の場合、業務上、関係解消後も当事者同士が顔を合わせる場合があります。

そのため、慰謝料請求と同時に今後は必要以上の接触や連絡は取らないという誓約を取り付けましょう。また、仮にこの誓約を破った場合の違約金なども決めておくと良いでしょう。

取り決めについては誓約書や示談書などといった書面にして証拠を残します。

示談書の例は次のとおりです。

慰謝料請求時の注意点

社内不倫の場合、今後も配偶者と不倫相手が同じ職場で働くことに不安を感じるのは当然です。不倫相手には退職してほしいと思うでしょう。

不倫相手への退職のお願いはできます。不倫相手が素直に従ってくれれば、問題ありません。

しかし、退職の強制はできません

また、不倫相手を退職に追い込むために、勤務先に掛け合うなどと脅したり、実際に勤務先に乗り込んだりする行為は、「脅迫罪」や「名誉棄損罪」といった刑事事件に発展する可能性があります。民事事件では、逆に損害賠償請求される可能性もあるため、注意しましょう。

浮気・不倫による慰謝料請求をしたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

浮気・不倫慰謝料を請求したい方へ|ネクスパート法律事務所仙台オフィス

社内不倫の発覚に伴うリスク

ここでは、社内不倫が発覚した場合に起こる4つのリスクをご説明します。

退職を求められる

社内不倫が発覚すると、以下の方から退職を求められる可能性があります。

  • 不倫相手
  • 不倫相手の配偶者
  • 自身の配偶者

会社から懲戒処分を受ける可能性がある

会社によっては、不倫が就業規則による「懲戒」の対象となる場合があります。

多くの会社は、私生活の行為であっても、会社の信用や職場環境を悪化させる行為があった場合に懲戒できるという規定を設けています。

よって、注意勧告などの軽い処分で済む場合もあれば、配置転換や減俸などの処分が下される可能性もあります。

慰謝料請求を受ける可能性がある

社内不倫がきっかけで自身と配偶者、または不倫相手夫婦が離婚する場合は、それぞれの配偶者から慰謝料を請求されるでしょう。

さらに、不貞相手が女性で妊娠した場合、慰謝料の増額事由になるうえ、不貞相手から出産費用や養育費あるいは中絶費用を請求されることもあります。

離婚請求を受ける可能性がある

配偶者から離婚を請求されることもあります。

離婚に伴い、次のような問題が生じます。

  • 婚姻費用
  • 親権
  • 養育費
  • 面会交流
  • 財産分与
  • 年金分割 

浮気・不倫による慰謝料請求をされた方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

浮気・不倫慰謝料を請求された方へ|ネクスパート法律事務所仙台オフィス

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まとめ

  • 配偶者の社内不倫が発覚した
  • 配偶者に社内不倫がバレてしまった

いずれの場合でも、直接相手方と交渉するとなると感情的になって話合いがうまく進まなかったり、余計にこじれてしまったりすることがほとんどです。

弁護士に依頼するメリットは次の4つです。

  • 示談交渉で相手方と直接会わずに解決できる
  • 相場に沿った慰謝料で解決ができる
  • 早期解決が期待できる
  • 解決後のトラブルを未然に防げる

納得のいく解決のためにも、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。