離婚の慰謝料請求で裁判になるケースとは

離婚原因が相手にある場合、離婚の慰謝料を請求することができます。離婚の慰謝料は当事者同士の協議で請求することもできますが、場合によっては裁判になることもあります。離婚の慰謝料請求が裁判になるのはどのようなケースなのでしょうか?

ここでは、離婚の慰謝料請求で裁判になるケースについて解説していきます。離婚裁判や、離婚の慰謝料が裁判で認められないケースについても紹介しているので併せて参考にしてください。

裁判になるまでの離婚の流れ

離婚をする際には、最初から裁判になるというわけではありません。離婚をする方法は「協議」「調停」「裁判」の3種類があり、裁判は離婚の最終手段であると言えます。裁判になるまでの離婚の流れについてみていきましょう。

協議

離婚をする際には、夫婦の話し合いで離婚を決める「協議離婚」から試みることが一般的です。離婚をするかしないかという点だけではなく、離婚条件についても話し合います。双方が離婚や離婚条件に合意することができれば、離婚を成立することができます。協議はあくまでも当事者同士で行うため、離婚原因に関係なく双方が合意すれば離婚ができるという点がメリットであるといえます。

調停

協議で合意に至らなかった場合は、調停へ移行します。調停は裁判手続きの一種であり、裁判所によって選任された調停委員会が介入して離婚や離婚条件について話し合いを行います。調停委員会が双方の意見を聞き、和解するように調整を行ってくれます。調停で双方が合意すれば離婚することができますが、合意に至らなければ裁判へ移行することになります。

裁判

裁判になれば、最終的に和解もしくは判決によって離婚の可否が確実に決められます。ただし、裁判で離婚が認められるには「法定離婚事由」が必要です。法定離婚事由とは法律で定められている離婚理由のことで、不貞行為や悪意の遺棄、モラハラ、DVなどが法定離婚事由に該当します。(民法第770条)裁判で離婚が認められれば、相手が離婚を拒んでいても法律上で離婚することが可能です。

離婚裁判とは

協議や調停で離婚が成立しない場合は裁判に発展しますが、離婚裁判になれば解決までには時間を要することになります。離婚裁判になれば、どれくらいの期間で離婚することができるのでしょうか?

離婚裁判にかかる期間

離婚裁判にかかる期間には個人差がありますが、半年~2年以内で終わるケースが多いといわれています。早いケースであれば数カ月で終わることもあるでしょう。離婚裁判は裁判所へ申立てを行ってから開始されますが、訴訟の審理が行われるのは月に1度程度のペースです。

双方が交代で主張を月に一度行うことになるため、協議に比べるとスムーズに進みにくいことがデメリットともいえます。離婚の事情が複雑な場合や、離婚で請求するものが多い場合、話し合うことも増えるため長期化しやすいと考えられます。

離婚の慰謝料を請求するのに裁判は必要?

相手に離婚理由がある場合、精神的に受けた苦痛に対する損害賠償として慰謝料を請求することができます。慰謝料というと裁判で請求するイメージがあるかもしれませんが、必ずしも裁判で請求しなければならないというわけではありません。

離婚の慰謝料は個人間で請求することも可能です。メールや電話などで請求することもできますが、一般的には内容証明郵便で書面を相手に送付します。そして、金額や支払いについて交渉を行い、相手が支払いに合意すれば慰謝料を受け取ることができます。

当事者同士で話し合いが難しい場合には、弁護士に依頼して交渉を行うことも可能です。当事者間や弁護士が介入しても話し合いが難航すれば、裁判へ発展することになります。しかし、裁判を避けたいと考える方も多いため、裁判へ発展する前に示談になることが多いと言えます。

裁判で認められる離婚慰謝料の相場

離婚の慰謝料は法律で細かく金額が決められているわけではありません。しかし、過去の判例などから離婚慰謝料の相場は50~300万円といわれています。離婚慰謝料の相場金額に幅がある理由は、離婚原因や内容、婚姻期間などさまざまな要素が考慮されるからです。

慰謝料は精神的苦痛が大きいと判断されるほど金額が増額されるため、婚姻期間が長ければ長いほど慰謝料金額は増額される傾向にあります。また、子どもがいる場合や離婚原因の悪質性が高い場合も慰謝料金額は高額になります。

離婚の慰謝料が裁判で認められないケース

離婚の慰謝料を請求しても相手が慰謝料の支払いを拒否する場合や、金額で合意に至らない場合は裁判に発展することになります。しかし、裁判をすれば慰謝料が認められないようなケースもあるので注意が必要です。裁判で離婚の慰謝料が認められないケースとして次のようなものが挙げられます。

慰謝料が発生する離婚理由がない

相手に離婚理由があれば慰謝料を請求できますが、全ての離婚理由で慰謝料が発生するというわけではありません。慰謝料が発生する離婚理由は、「不貞行為」「悪意の遺棄」「モラハラ」「DV」など不法行為に該当するような場合です。

不法行為とは他人の権利や利益を故意や過失によって侵害する行為であり、加害者は被害者に対して損害を賠償することが法律で定められています。(民法第709条)こうした民法上の不法行為がなく、慰謝料が発生するような離婚理由がない場合には裁判で慰謝料は認められません。

自分にも非がある

離婚の慰謝料を請求できるのは、どちらか一方に有責性がある場合です。あなたにも非があるような場合には、裁判で慰謝料請求は認められません。例えば、「性格の不一致」や「価値観の違い」といった離婚理由の場合は、配偶者だけではなくあなたにも非があると考えられます。

また、配偶者の不貞行為を理由に離婚の慰謝料を請求したとしても、あなたが先に不貞行為をしていたのであれば、あなたが不貞行為をしたことで夫婦関係が破綻したと考えられるため、慰謝料請求は認められません。反対に、相手から慰謝料を請求される恐れがあります。

証拠がない

離婚の慰謝料を請求する場合、慰謝料を請求する原因を立証できる証拠が必要です。証拠がなく、口頭のみでの主張は裁判で認められません。慰謝料を請求する前に、できるだけ多くの証拠を集めておくようにしましょう。

不貞行為の場合であれば、ホテルに出入りしている写真やホテルの領収書、本人の自白などが証拠として有効です。モラハラやDVを受けていた場合には、被害を受けている録音や録画、病院の診断書、日記などが証拠になります。どのような証拠を集めればいいのか分からないという場合には、弁護士に相談してみてください。

まとめ

離婚の慰謝料請求は、裁判をする前に協議や調停で請求することができます。ご自身で請求することも可能ですが、当事者同士の話し合いは感情的になってしまい、解決までに時間がかかってしまうことや状況が悪化してしまうことも珍しくありません。

離婚の慰謝料請求や離婚請求に関する問題は、弁護士に相談してみることをおすすめします。適切な慰謝料を請求できるだけではなく、面倒な手続きや交渉など全てを任せることができます。離婚の慰謝料請求は精神的な負担も大きいですが、弁護士のサポートは心強い味方になってくれるでしょう。