宮城県の令和元年の人口動態統計によれば、同県の離婚件数は3780組、離婚率は1.66‰と前年を上回り、全国20位(前年32位)でした。
近年は「3組に1組が離婚している」とよく耳にします。
しかし、そんなに多くの夫婦は離婚していないのでは?と感じませんか。
これは、1年間に提出される婚姻届の総数に対して離婚届の総数が3分の1程度であるため、「3組に1組が…」とメディアによく使われているようです。
実際に、厚生労働省による「令和元年の全国の人口動態統計」では、婚姻件数が58万3000組に対して離婚件数は21万組でした。
参考:令和元年(2019)人口動態統計の年間推計|厚生労働省
近年、離婚する夫婦が増えている印象があります。
しかし、厚生労働省の人口動態総覧の年次推移によれば、全国的にみると平成14年をピークに年々減少傾向に転じています。
では、宮城県の離婚率と離婚件数は近年どのように推移しているのでしょうか。
この記事では、次の点についてご説明します。
- 宮城県の離婚率・離婚件数の推移
- 離婚の理由
- 離婚の手続
宮城県の離婚率・離婚件数の推移
近年の宮城県の過去14年の離婚率と離婚件数の推移は次のとおりです。
宮城県では、離婚率と離婚件数は比例して推移しています。
平成23年に減少し、翌2年は増加していますが、平成22年以前と比べると全体的に減少傾向にあることがわかります。
宮城県の離婚率と離婚件数についてそれぞれご説明します。
宮城県の離婚率
離婚率は、厚生労働省において1年間の人口1000人に対する離婚件数の割合で算出しており、宮城県や仙台市も同様の方法で算出しています。
令和元年の宮城県の離婚率は1.66‰でした。
これは、1000人中1.66組が離婚したということです。
仙台市の同年の離婚率は、1.73‰でした。
宮城県内の平均より仙台市の離婚率が高いことがわかります。
参考:令和元年人口動態統計(確定数)の概況|宮城県、仙台市統計書|仙台市
全国、宮城県、仙台市の過去14年の離婚率の推移は次のとおりです。
宮城県、仙台市ともに平成23年に減少し、平成24~25年にかけて増加しています。
宮城県は、全体的にみてほぼ全国平均に近い位置にあり、過去14年の順位を平均しても25.5位とほぼ真ん中の順位であることがわかります。
東北地方は離婚率が低く、九州・沖縄地方は離婚率が高いといわれています。
令和2年の東北地方と九州・沖縄地方の離婚率と離婚件数は次のとおりです。
離婚率1位の沖縄県と45位の秋田県では2倍近く差があります。
地域全体でみても全国の離婚率1.69‰を超えている県は、九州・沖縄地方は8県中6県あるのに対し、東北地方は6県中0県です。
東北地方の離婚率が低いことがわかります。
宮城県の離婚件数の推移
宮城県と仙台市の過去14年の離婚件数は次のとおりです。
令和元年10月1日時点での宮城県の推計人口は230万3160人でした。その内3780組が離婚しているので、宮城県内では人口の約0.32%の人が離婚したということです。
また、宮城県のうち仙台市の離婚件数が4~5割を占めています。
同年の仙台市の人口は109万1992人でした。その内1813組が離婚しているので、仙台市内では約0.33%の人が離婚したということです。また、宮城県の割合に比例して変動していることがわかります。
宮城県の離婚件数を全国と比べると次のとおりです。
一貫して全国の離婚件数に対して宮城県の離婚件数は、2%弱となっています。
全国的にみても減少傾向にあることがわかります。
離婚の理由
では、離婚の理由には、どのようなものがあるのでしょうか。
次の表は、令和2年度に離婚調停を申立てた申立人の動機のうち主な3つを集計した結果です。
参考:家事令和2年度 婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所|裁判所
離婚の理由1位は「性格の不一致」
まず、男性からの離婚調停申立て件数に対して女性からの申立ての方が約3倍多いことがわかります。
そして、男女ともに離婚の理由に一番多く挙げたのが「性格が合わない」です。
- 衣・食・住の好みが合わない
- 休日の生活スタイルが合わない
- 家事の取り組みへの考え方が合わない
- 育児や教育への考え方が合わない
- 経済的感覚が合わない など
様々な理由が考えられますが、離婚の原因が明確でない場合でも「性格の不一致」と言えば、それなりに聞こえ、表現しやすいことから男女ともに1位になっていると考えらえます。
また、男女によって離婚の理由に差異があることがわかります。
以下でご説明します。
男性側の離婚理由
男性側が離婚調停を申し立てたときの理由は次のとおりです。
参考:家事平成22年度 婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所|裁判所
10年前の離婚理由の1位も「性格が合わない」でした。
しかし、10年前と比べると、「異性関係」や「家族親族と折り合いが悪い」という理由は減少し、「精神的に虐待する」が増加しています。
労働力人口総数に占める女性の割合は年々増加傾向にあり、夫婦の共働きが当たり前の時代となりました。
待機児童の問題は平成29年をピークに全国的には減少傾向にありますが、自治体によっては、増加している地域もあります。
令和2年のデータによると宮城県は、前年より減少しましたが、待機児童率は全国平均を上回る数字でした。
参考:2020(令和2)年4月1日時点の待機児童数について|厚生労働省
また、男性の育休取得率は、近年増加傾向にあり、令和2年度の男性育休取得率は12.65%と過去最高となりました。しかし、それでもまだ全体の1割です。
参考:「令和2年度雇用均等基本調査」結果を公表します|厚生労働省
妻の家庭と仕事の両立がうまくいかないフラストレーションを、夫につい向けてしまい、それが日常化してしまった結果なのかもしれませんね。
女性側の離婚理由
女性側が離婚調停を申し立てたときの理由は次のとおりです。
参考:家事平成22年度 婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所|裁判所
10年前と比べると、順位の前後はありますが、上位5位の理由に変動はありませんでした。
「性格が合わない」のほかは、経済的・精神的・身体的なハラスメントが理由となっています。
近年は、「モラハラ」という言葉をよく耳にします。
精神的な虐待のひとつです。
身体的な暴力に比べて発覚しにくく、長期化すると「夫の言うことがすべて正しい」などといった感情の刷り込みに繋がります。
精神的な虐待が離婚理由の場合、本人同士での離婚協議は困難です。離婚を切り出すことも難しいでしょう。
家族などの第三者、または弁護士を介して話合いを行うか、すぐに離婚調停を申し立てる必要があります。
なお、離婚調停を申し立てる場合は、別居されてから行うと良いでしょう。
モラハラなどの精神的な虐待については、その内容や期間、それによって受けた精神的苦痛の程度や結果によって慰謝料を請求できる可能性があります。
しかし、慰謝料を請求するには、次のような証拠が必要となります。
- 医療機関の診断書や診療録
- 録音データ
- メールやLINEのやりとり
- 日々の嫌がらせなどの記録や日記 など
「性格が合わない!」だけでは離婚できない
協議離婚であれば、どんな理由であっても双方の合意があれば離婚することが可能です。
しかし、調停や裁判となる場合、単に「性格が合わない」だけでは離婚することはできません。
離婚するためには、性格の不一致が婚姻関係を継続しがたい大きな支障となっている必要があります。
つまり、お互いの性格が合わないことで、結果として婚姻関係が破綻した状態になっていると認められなければ離婚できません。
裁判上、離婚が認められる5つ理由
離婚したいと思っても、配偶者が離婚に同意しなければ離婚することができません。
本人同士の話し合いで解決できない場合は、離婚調停を申し立てる必要があります。それでも配偶者の一方が離婚を拒否した場合は、離婚裁判を行うことになります。
民法では、次の5つの事由があれば、離婚できると定めています。
- 配偶者に不貞な行為があったとき(民法第770条1項1号)
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき(民法第770条1項2号)
- 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき(民法第770条1項3号)
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(民法第770条1項4号)
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(民法第770条1項5号)
以下でご説明します。
不貞行為
「不貞な行為」とは、配偶者のある者が、配偶者以外の者と自由な意思で肉体関係を結ぶことです(最判S48.11.15判決)。
夫婦には、互いに貞操を守る義務があり、婚姻中に配偶者以外と性交渉を持つことは認められていません。
離婚が認められるには、不貞行為により婚姻関係が破綻している必要があります。
また、1回だけの不貞行為では離婚は認められにくく、継続的に行われている必要があります。
悪意の遺棄
夫婦は同居し、互いに協力し扶助する義務があります(民法752条)。
悪意の遺棄とは、これに反することです。
次のような場合は、悪意の遺棄に該当する可能性があります。
- 一方の配偶者が、行先や理由を告げずに一方的に家を出る
- 一方の配偶者が、同居する居宅の鍵を換えて家に入られないようにしたり、追い出して帰宅を拒否したりする
- 生活費を渡してくれない など
3年以上の生死不明
配偶者の行方がわからなくなり、生死不明の状態が3年以上続いている場合に離婚が認められます。
しかし、単に3年以上居場所がわからない、連絡が取れないというだけでなく、警察へ捜索願を出している必要があります。
回復見込みのない強度の精神病
夫婦は、互いに協力し扶助しなければならず、単に配偶者が精神病になったからと言って離婚が認められるわけではありません。
意思の疎通が難しい精神病にかかってしまい、回復の見込みがないと判断される場合に、離婚が認められます。
意思の疎通が取れないと離婚協議ができないため、離婚裁判によって判断されます。相手の病状が、正常な夫婦生活を送ることが困難な状態であるかが基準となります。
婚姻を継続しがたい重大な事由
上記1号~4号には該当しないが、婚姻継続しがたい重大な事由がある場合も、離婚が認められます。しかし、具体的な事由が挙げられていないため、裁判所が個々の事情を検討し、夫婦関係が破綻した状態であるかを判断します。
婚姻を継続しがたい重大な事由の例には次のようなものが挙げられます。
- 性格の不一致
- 労働意欲の欠如
- 親族との不和
- 性的不調
- アルコール・薬物依存
- 身体的及び精神的暴力や虐待
- 過剰な宗教活動
- 犯罪行為 など
いずれも離婚が認められるためには、単に上記のような事情があるだけでなく、その事情の結果として婚姻関係が破綻している状態にある必要があります。
離婚の手続は4種類
離婚する際の手続には、次の4つがあります。
- 協議離婚
- 調停離婚
- 審判離婚
- 裁判離婚(和解離婚・認諾離婚・判決離婚)
令和2年の全国の離婚件数は19万3253組でした。
そのうちの約9割は協議離婚によるものです。
参考:令和2年人口動態統計 中巻 離婚 第4表 離婚件数,都道府県(特別区-指定都市再掲)・離婚の種類別|e-Stat政府統計の総合窓口
ここでは、離婚の手続についてご説明します。
協議離婚
夫婦間の話し合いにより、双方が離婚に合意した場合、離婚届を市区町村に提出すれば離婚が成立します。
財産分与・慰謝料・養育費・面会交流など金銭のやりとりや子に関する取り決めがある場合は、公正証書を作成することをお勧めします。
調停離婚
夫婦間の話し合いにより離婚に合意が得られない場合や相手が話し合いに全く応じない場合は、離婚調停を申し立てます。
離婚調停では、調停委員が中心となって夫婦双方の話を聞き、それぞれが希望する離婚条件に対する意見の調整を行います。
調停により離婚が成立した場合、10日以内に裁判所により作成された調停調書と離婚届を市町村役場に提出する必要があります。
調停により離婚が成立しなかった場合は、審判や訴訟へ移行します。
審判離婚
夫婦双方が希望する離婚条件などに折り合いがつかず、離婚調停が不成立となった場合、原則として離婚調停手続は終了します。しかし、例外的に裁判所が離婚を成立させるのが相当と判断した場合に審判に移行することがあります。この審判を、「調停に代わる審判」といいます。
審判の内容に納得がいかない場合は、2週間以内に異議申立をしなければなりません。
期間内に当事者のどちらからも異議申立がない場合は、審判の告知を受けた日の翌日から2週間が経過した日に審判が確定し、この審判確定日が離婚した日となります。
審判が確定したら、10日以内に離婚届のほか審判書及び審判確定証明書を市町村役場に提出する必要があります。
なお、審判は確定判決と同一の効力をもちます。
裁判離婚
離婚訴訟を提起するには、原則として事前に調停手続を経ていなければなりません。
離婚調停が不成立となった場合に、離婚訴訟を提起します。
離婚訴訟では、離婚調停では合意に至らなかった点を中心に当事者双方が主張・立証します。争点が整理された後、尋問手続が実施されることもあります。
裁判離婚による解決には次の3つがあります。
- 和解による解決
- 認諾による解決
- 判決による解決
以下でご説明します。
和解による解決
争点整理がなされた後、裁判所から和解の提示がなされることがあります。
当事者双方が裁判所の和解案に合意すれば、和解により離婚が成立します。
和解が成立したら、10日以内に裁判所が作成した和解調書と離婚届を市区町村役場へ提出する必要があります。
なお、和解調書は確定判決と同一の効力をもちます。
認諾による解決
認諾とは、離婚裁判を提起された側(被告)が提起した側(原告)の離婚請求を全面的に受け入れ離婚が成立することです。
認諾が成立したら、10日以内に裁判所が作成した認諾調書と離婚届を市区町村役場へ提出する必要があります。
なお、認諾調書は確定判決と同一の効力をもちます。
判決による解決
和解が成立しない場合、尋問を実施したりしながら裁判所が離婚の可否やその他の離婚条件について判断し、判決がなされます。
判決の内容に納得がいかない場合は、2週間以内に控訴を提起しなければなりません。
期間内に当事者のどちらも控訴しない場合は、判決書を受け取った翌日から2週間が経過した日に判決が確定し、この判決確定日が離婚した日となります。
離婚する内容の判決が確定したら、10日以内に離婚届のほか判決書及び判決確定証明書を市町村役場に提出する必要があります。
なお、判決の中に養育費や慰謝料、財産分与といった取り決めが記載されていれば、相手方がその支払いを怠った場合、強制執行ができます。
有責配偶者からでも離婚できるケース
有責配偶者とは、離婚の原因を作った側(不貞行為などを行った側)の配偶者を指します。
有責配偶者からの離婚の請求は信義則に反するとして原則的に認められていません。
しかし、離婚請求に至るまでの状況や離婚後の影響などの総合的な事情から有責配偶者からの離婚請求が認められる場合があります(最大判S62・9・2判決)。
その事情として次のようなものが挙げられます。
- 別居期間が相当の長期に及んでいる
- 夫婦間に未成熟子がいない
- 離婚により一方の配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれるなど著しく社会正義に反するといえる特段の事情がない など
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ネクスパート法律事務所仙台オフィスにご依頼された場合の弁護士費用は、「弁護士費用」のページをご参照ください。
まとめ
この記事では、離婚件数・離婚率ともに平成14年をピークに減少していること、離婚の理由は男女ともに「性格の不一致」が一番多いことがわかりました。
しかし、一方的に離婚を要求したい場合は、単に「性格の不一致」だけでは離婚できません。性格の不一致が原因で結果として婚姻関係が破綻にまで陥っていなければ離婚が認められないのです。
離婚について弁護士に依頼するメリットは次の5つです。
- 感情的にならずスムーズな交渉ができる
- 裁判例に基づいた客観的な解決ができる
- 不用意な主張で不利になることを防げる
- 離婚理由や証拠収集についてアドバイスがもらえる
- 離婚裁判となった際に煩雑な手続きを任せられる
納得のいく解決のためにも、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。