離婚をすることになったため、配偶者に慰謝料を請求したいと考える方もいるでしょう。しかし、離婚をするからといって配偶者に慰謝料を必ず請求できるわけではありません。
では、どんな離婚理由ならば慰謝料を請求することができるのでしょうか?ここでは、慰謝料を請求できる離婚理由について解説します。併せて、慰謝料を請求するのが難しいケースや、慰謝料を請求できないケースについても紹介しているので参考にしてください。
離婚の慰謝料とは
離婚の慰謝料とは、離婚によって生じる精神的苦痛に対して支払われる損害賠償のことを指します。離婚に至る原因を作り出した「有責配偶者」から、精神的苦痛を受けたもう一方の配偶者に対して支払われることになります。そして、離婚の慰謝料は大きく分けると2種類あります。
1つ目は、離婚をすること自体から生じる精神的苦痛苦痛です。この場合、どちらが離婚原因を作ったのか分からないようなケースでは支払われません。一方に離婚原因がある場合に支払われます。
2つ目は、離婚に至った原因の行為から生じる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。この慰謝料が認められる行為とは、不倫などの法定離婚事由に該当するような行為です。
法定離婚事由になるような行為は、法律で守られるべき夫婦の婚姻生活の平和を維持する権利を侵害するような不法行為になるため、慰謝料の請求が認められます。
慰謝料を請求できる離婚理由の代表例
慰謝料を請求できる離婚理由は、法律で認められている離婚理由である「法定離婚事由」と重複することが多いです。慰謝料を請求できる離婚理由の代表例を紹介していきます。ご自身の離婚理由と比較し、慰謝料を請求できるかどうか検討してみてください。
不貞行為
不貞行為とは、いわゆる「不倫」や「浮気」のことを指します。不貞行為は「配偶者以外の人と肉体関係を持つこと」を言います。不貞行為は婚姻生活の平和を損なう原因になる行為です。配偶者が他の誰かと肉体関係を持っていたことを証明することができれば、不貞行為があったとして慰謝料を請求することが可能です。
DV、モラハラ
DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、夫婦や恋人など親密な関係にある相手から殴る・蹴るなどの身体的な暴力を受けることを指します。また、モラハラ(モラルハラスメント)はDVの一種で、言動や態度で精神的な暴力のことを言います。
DVやモラハラの被害者は加害者に対して離婚や慰謝料請求することに不安や恐怖を覚える傾向にあります。実際に離婚を請求する際には、まず自分の身の安全を確保してから離婚を切り出すことをおすすめします。また、慰謝料を請求する際には、DVやモラハラを受けていたことを証明できる証拠が必要となります。
悪意の遺棄
夫婦には、法律で定められている「夫婦は同居して互いに協力し、扶助しなければならない(民法第752条)」という義務があります。悪意の遺棄は、この義務を合理的な理由なく履行しないことを指します。具体的には、次のような行為が悪意の遺棄に該当します。
・配偶者に生活費を渡さずに生活を困窮させている
・一方的に家を出て行ってしまい、不倫相手と同居している
・配偶者を理由なく家から追い出し、同居を拒否している
・病気の配偶者の世話をせずに置き去りにし、生活費も送らない
離婚時に慰謝料を請求するのが難しいケースとは
離婚時に慰謝料を請求することが難しいケースとは、両者に離婚原因があるような場合です。例えば、「性格の不一致」や「価値観の違い」という理由はどちらか一方が責めを負うべきことではありません。どちらにも責任があるため、損害は発生しないと考えられます。
また、相手が離婚原因を作った有責配偶者であったとしても、自分にも責任があるような場合は慰謝料請求することは難しいでしょう。例えば、夫婦が互いに不倫をしていた場合であれば、慰謝料請求をしても相殺されてしまうと考えられます。
離婚原因が相手にあっても慰謝料を請求できないケース
離婚原因が相手にあったとしても、必ず慰謝料を請求できるとは限りません。慰謝料が請求できないようなケースもあるので注意が必要です。有責配偶者に対して慰謝料を請求できないようなケースには、次のようなケースが挙げられます。
婚姻関係がすでに破綻していた
離婚原因になった行為が行われた時に、すでに婚姻関係が破綻していたような場合は慰謝料を請求することができません。なぜならば、法律で守られるべき婚姻生活の平和を維持する権利が消滅していると考えられるからです。婚姻関係が破綻していたと認められるようなケースは、次の通りです。
・双方が離婚に合意しており、離婚に向けて協議をしている
・離婚調停中で、互いに離婚の意思がある
・長期間別居している
ただし、一方的に離婚を申し出ており、他方が離婚に合意していないようなケースは婚姻関係の破綻は認められません。また、長期間別居をしている場合でも、単身赴任や子どもの就学、親の病気の看病など、合理的な理由があって別居をしているのであれば婚姻関係の破綻は認められない可能性が高いでしょう。
証拠がない
慰謝料を請求する場合には、慰謝料を請求する理由を証明できる証拠が必要です。証拠がなければ相手は離婚原因になった行為があったことを否定する可能性があり、それに対して立証することが出来ません。
裁判になった場合も証拠の提出が必須になり、証拠がなければ慰謝料請求は認められないでしょう。そのため、慰謝料請求を行うには証拠集めから始めることが大切です。どのような証拠が有力な証拠になるのか判断が難しい場合には、弁護士に相談してみてください。
時効が成立している
慰謝料の請求権には時効があるため、どれだけ時間が経っていても請求できるわけではありません。慰謝料請求の時効は3年です。離婚の慰謝料の場合、時効の起算点は離婚時になります。
時効が成立してしまえば、慰謝料請求できる離婚原因だったとしても慰謝料を請求できる権利自体が消滅してしまっています。そのため、時効成立が近い慰謝料請求の場合は、速やかに内容証明郵便で慰謝料請求を行うことをおすすめします。内容証明で慰謝料を請求すれば、時効の進行を中断させることが可能です。
相手に支払い能力がない
慰謝料請求を行っても、相手に支払い能力がなければ慰謝料の支払いは困難です。相手が専業主婦など仕事をしていない状態であれば、収入がないため慰謝料が支払えないという主張を行うケースがあります。
本当に支払い能力がなければ、裁判で勝訴したとしても回収できる金銭がありません。しかし、現金がなくても資産があれば、強制執行で財産を差し押さえて換価することができます。また、協議であれば、分割払いや親族からの援助などを提案してみることも可能です。
まとめ
離婚慰謝料を請求するには、相手が離婚理由を作ったという証拠が必要です。ただし、時効や相手の支払い能力などによって慰謝料請求できないようなケースもあります。まずは弁護士に相談し、離婚慰謝料が請求できるのかどうか確認してみましょう。
その際には慰謝料の相場や離婚条件などについても併せて相談してみると、今後の離婚手続きがスムーズに進めやすくなります。また、弁護士に依頼すれば面倒な離婚手続きや相手との交渉も任せられるので、弁護士のサポートを受けることも検討してみてください。