不倫慰謝料請求の消滅時効を解説!

不倫による慰謝料を請求するには、その不倫が民法第709条の不法行為に該当していなければなりません。

不法行為を満たす不倫の要件は、次のとおりです。

  • 不貞行為の事実がある
  • 不貞行為による損害が発生している
  • 故意・過失がある

不倫が不法行為に該当すると、民法第724条の消滅時効に関する定めが適用されるため、不倫慰謝料請求権にも時効による制限があると言えます。

 

民法第724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)

不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する

一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき

二 不法行為の時から二十年間行使しないとき

引用:e-Gov法令検索

 

この記事では、不倫慰謝料請求の時効についてご説明します。

 

目次

不倫慰謝料の時効

消滅時効が完成すると不倫による慰謝料請求が難しくなります。

ここでは、不倫慰謝料の時効期間についてご説明いたします。

 

不倫慰謝料の消滅時効は3年

民法第724条第1号は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知ったときから3年間行使しないとき、不法行為による損害賠償の請求権は時効によって消滅すると定めています。

 

以下で詳しく説明します。

損害を知ったときとは

不倫慰謝料請求での被害者とは、不倫をされた配偶者です。

配偶者にとっての損害は、次の3つです。

  • 不貞行為の事実を知ったことによる精神的損害
  • 不貞行為が原因で婚姻関係が破綻したことによる精神的損害
  • 不貞行為が原因で離婚したことによる精神的損害

 

加害者を知ったときとは

加害者を知ったときとは、慰謝料を請求するために必要となる相手方を特定(氏名や住所などの連絡先が判明)したときです。

不貞行為の事実を知った場合でも、不倫相手がどこの誰かがわからない場合は、請求権の時効期間は進行しません

 

慰謝料の名目によって起算日が異なる

配偶者がどの損害の名目で慰謝料を請求するかによって起算日が次のように異なります。

不貞行為を知ったことにより生じた精神的苦痛に対する慰謝料請求

時効開始の起算日は、不貞行為の事実を知った日です。

不貞行為が原因で婚姻関係が破綻したことにより生じた精神的苦痛に対する慰謝料請求

時効開始の起算日は、婚姻関係が破綻した日です。

婚姻関係が破綻とは、離婚した関係に等しい状態のことです。具体的には別居を開始した日などが挙げられます。

不貞行為が原因で離婚したことにより生じた精神的苦痛に対する慰謝料請求

時効開始の起算日は、夫婦が離婚した日です。

不倫慰謝料は請求先によって起算日が異なる

不倫慰謝料は、不貞相手と配偶者のどちらにも請求できます。

請求先によって、次のように起算日が異なります。

不倫相手の時効

不倫相手に請求する際の時効開始の起算日は、不倫相手の氏名や住所等などの連絡先を知った日です。

ただし、長期間不倫関係が継続している場合は、注意が必要です。

例えば、5年前に不倫が発覚し、その時点で不倫相手を特定し、現在もその不倫相手と配偶者の関係(不貞行為を含む)が継続している場合です。

この場合、不倫相手を特定した日から3年を経過している期間については消滅時効が完成しているため、慰謝料を請求できません。しかし、直近2年分については、消滅時効が完成していないため、不倫慰謝料請求が認められる可能性があります。

配偶者の時効

配偶者に請求する際の時効開始の起算日は、離婚した日です。

不倫が原因で夫婦が別居を開始し、後に離婚する場合は、不倫が離婚原因として評価されるため、時効期間は離婚した日からスタートします。

なお、離婚しない場合は、民法第159条により、婚姻関係が続いている限り消滅時効は完成しません。

民法第159条 (夫婦間の権利の時効の完成猶予)

夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

引用:e-Gov法令検索

 

不貞行為があったときから20年で請求権が消滅する

さらに民法第724条第2号は、不法行為のときから20年間行使しないとき、不法行為による損害賠償の請求権は、時効によって消滅すると定めています。

不倫慰謝料請求の場合、不法行為のときとは、不貞行為を行った日です。

例えば、5年前の不倫であっても、不倫相手を特定してから3年以内であれば慰謝料請求が認められます。

しかし、一方で不倫の事実があったとしても、発覚が20年を経過した後の場合は、消滅時効が完成し、慰謝料請求が認められにくくなります。

 

なお、改正前民法では、民法724条第2号は除斥期間を定めたものと解されていたため、不法行為の日から20年が経過すると時効の完成猶予や更新ができず、当然に請求権が消滅し、慰謝料の請求ができませんでした。

よって、2020年3月31日までに不貞行為の日から20年が経過している不倫慰謝料については、請求できません。

 

不倫慰謝料の時効を中断させるには

消滅時効が完成していない時点であれば、次の4つの方法により、消滅時効の完成の猶予や進行中の時効期間の更新ができます。

以下で説明します。

 

内容証明による催告

催告とは、相手方に対して、一定の行為を要求することです。慰謝料請求においては、内容証明郵便などにより、慰謝料を請求することを指します。

催告することで、催告のときから6ヶ月を経過するまで時効の完成が猶予されます(民法第150条1項)。

催告は何度でもできますが、催告によって消滅時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告には猶予の効力がない(民法第150条2項)ので、注意が必要です。

また、慰謝料請求について協議を行う内容の合意が書面でされたときは、その合意があったときから1年を経過するまで消滅時効の完成が猶予されます。(民法第151条第1項)

 

訴訟提起(裁判上の請求)

時効期間に裁判所へ訴訟を提起すると裁判が終了するまでの間は、消滅時効の完成が猶予されます(民法第147条1号)。

確定判決を得た場合は、判決が確定したときから新たに時効が進行し、時効期間は10年に延長されます(民法第169条)。

なお、取り下げなどにより確定することなく裁判が終了した場合は、消滅時効の完成は終了のときから6ヶ月猶予されます。

 

債務の承認

配偶者や不倫相手が慰謝料の支払を認めた場合は、認めたときから新たに時効が進行し、時効が更新されます(民法第152条1項)。

また、配偶者や不貞相手が慰謝料の一部を支払ったり、支払期限の延長や減額を申し入れてきたりした場合も、慰謝料の支払いを認めたことになり、債務の承認になります。

配偶者や不貞相手に債務の承認をさせる場合は、後に消滅時効を主張されないよう必ず書面に残しましょう。

 

仮差押・仮処分・差押

仮差押や仮処分は、訴訟を起こす前に相手方が金銭や金銭以外の資産を隠したり処分したりする可能性がある場合に、事前に相手方の財産の処分を禁止する手続きです。

時効期間は、仮差押および仮処分の手続きが終了したときから6ヶ月猶予されます(民法第149条)。

 

差押は、公正証書や確定判決などによる債務名義がある場合に、相手方の預金などを差し押さえて回収する手続です。

差押の手続が終了するまでは消滅時効が猶予されます(民法第148条1項)。

 

時効期間が経過しても不倫慰謝料を請求できる?

時効期間が経過し、時効が完成すると不倫慰謝料を支払ってもらうことは難しくなります。

しかし、次のような場合は時効期間が経過しても不倫慰謝料を請求できます。

 

任意に不倫慰謝料の支払いに応じる場合

時効期間が経過したからといって当然に時効による不倫慰謝料の請求権が消滅するわけではありません。配偶者や不倫相手が時効期間満了により不倫慰謝料は支払わないと意思を表明することで消滅時効が完成します。

よって、時効期間が経過しても配偶者や不倫相手に慰謝料を支払う意思があれば、不倫慰謝料請求はできます。

また、配偶者や不倫相手が時効期間の満了に気付かずに不倫慰謝料の支払いを認めた場合も債務の承認があったとされ、時効が更新されます。

 

離婚慰謝料に該当すれば不倫相手に請求できる可能性がある

不倫相手を知った時から3年が経過し、消滅時効が完成した場合でも離婚慰謝料として不倫相手に請求できる場合があります。

原則として離婚慰謝料の請求先は、配偶者のみです。離婚は夫婦間で決めるべき事柄です。不倫により婚姻関係が破綻し離婚に至ったとしても、不貞相手に離婚を原因とする慰謝料請求は請求できません(最高裁平成31年2月19日判決)。

しかし、不倫相手が離婚させることを意図して夫婦の婚姻関係に対して不当に干渉するなどして離婚に至った場合は、離婚慰謝料請求が認められることがあります。

 

不倫慰謝料が時効で請求できなくなる前に確認すべきこと

消滅時効により不倫慰謝料の請求ができなくなること防ぐために確認すべきことをご説明します。

 

不倫の証拠を収集しておく

時効期間内であっても、証拠がなければ不倫慰謝料の請求はできません。

不貞行為の証拠には、次のようなものが挙げられます。

  • 配偶者と不貞相手がホテルや不貞相手の家に宿泊する様子などの写真や動画
  • 肉体関係をもったことが推認されるメールやラインのやり取り など

 

不倫が発覚したらすぐに不倫慰謝料を請求する

不倫の事実が発覚したら、できるだけ早く不倫慰謝料を請求しましょう。

時効期間の3年は意外とあっという間に過ぎてしまうものです。

請求方法や金額などに不安がある場合は、すぐに弁護士に相談しましょう。

 

時効を中断させる

不倫の発覚から3年の経過が目前の場合は、内容証明で催告することで時効完成を猶予させなければいけません。

書面の作成に時間がかかったり、どのような書面を作成すべきか悩まれた場合はすぐに弁護士に相談しましょう。

 

まとめ|時効間近の不倫慰謝料請求は弁護士へ

ご自身での不倫慰謝料の請求は証拠集めに時間がかかったり、相手方との交渉が長期化し、仕舞には連絡が取れなくなってしまったりなど、時効期間があっという間に経過してしまう場合があります。

せっかく準備したのに、時効期間が経過してしまっては不倫慰謝料請求が難しくなってしまいます。

そのような事態にならないためにも早めに弁護士に相談すると良いでしょう。特に時効期間の満了が間近の不倫慰謝料請求は、すぐに書面を作成し、時効期間を猶予させる必要があります。

 

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