不倫慰謝料は、請求された金額をそのまま支払う必要はありません。資産がなく、明らかに支払えないときは、合意せずに弁護士に相談しましょう。
この記事では、不倫慰謝料が支払えないときの対処方法や、支払わないと起こることについてご説明します。
不倫慰謝料が払えない場合はどうすべき?
不倫の慰謝料請求の相場は、50万円~300万円です。収入が少なく、資産もない場合、一括で支払うのは困難です。
ここでは、不倫慰謝料が払えないときの対処法をご説明します。
不倫の慰謝料とは
不倫の慰謝料は、不倫発覚により被った精神的苦痛を金銭に換価し、その損害を償うために支払うものです。
弁護士が代理人として請求する場合、不貞行為があったことを原則として、次の具体的事情を考慮して算出します。
- 夫婦関係(年齢、婚姻関係、子の年齢や養育状況、職業、収入や資産)
- 不倫関係が始まった時点での夫婦関係(円満だったか、破綻していたか)
- 不倫関係が始まった経緯や内容(期間、回数、場所、主導者、子の有無)
- 不倫発覚後の影響
- 不貞相手について(年齢、配偶者や子の有無、職業、収入や資産)
不倫の慰謝料が払えないときの対処法1
不倫の慰謝料が支払えないときの対処法のひとつ目は、減額交渉です。
減額の交渉
減額交渉では、次の検討が必要です。
- 請求内容の正当性
- 請求金額の適正性
請求人が離婚しない場合は、求償権を行使しない(=不倫相手には金銭を要求しない)ことを条件に減額を求めることも有効です。
減額交渉の注意点
不倫の当事者が減額を求めても応じてもらえないことがあります。ご自身で減額交渉する場合は、減額の根拠を伝える前に次の3点を伝えます。
- 真摯な謝罪
- 支払えない理由
- 支払限度額
不倫の慰謝料が払えないときの対処法2
不倫の慰謝料が支払えないときの対処法のふたつ目は、分割払いです。
分割払いの交渉
分割払いは、請求人にとって2つのデメリットがあります。
- 滞納のリスクがある
- 支払い終わるまで関係が切れない
そのため、分割払いの交渉では、支払いが滞った場合の条件を提案すると受け入れやすくなります。例えば次のとおりです。
- 強制執行ができる文言を入れる
- 未払分を一括で支払う内容の文言を入れる
- 執行文つきの公正証書の作成に応じる
分割払いの注意点
執行文つきの公正証書を作成すると、支払が滞った場合に給与や預貯金が差押えられます。毎月支払える範囲の金額で合意しましょう。
法外に高い慰謝料は支払わない
請求人は、被害者意識から相場よりも高い慰謝料を請求することがあります。減額を見越して、高めに請求していることもあります。特に300万円以上を請求されている場合は、合意前に適正額を検討しましょう。
相手方との交渉は弁護士に依頼する
裁判上、減額事由として次の事情が考慮されます。
- 夫婦間に子がいない
- 夫婦間の子が成熟している(子が成人している、独立している)
- 夫婦間の婚姻期間が短い(4年弱程度)
- 不貞行為期間が短い(1年程度)
- 不貞行為の回数が少ない(1~数回程度)
- 夫婦関係が円満とは言えない、相当程度悪化していた
- 不倫関係以外にも夫婦関係の破綻の理由がある
- 離婚には至っていない
当事者同士での交渉は、減額を主張しても請求人を刺激し、スムーズな解決が困難です。弁護士に依頼することで、スムーズに適正額での解決ができます。
不倫慰謝料を払わないと起こること
不倫慰謝料を支払わないと、次の2つが起こる可能性があります。
不倫慰謝料請求訴訟が申し立てられる
不倫慰謝料請求訴訟が申し立てられた場合のデメリットは次のとおりです。
訴状が自宅か勤務先に届く
訴訟が申し立てられると、裁判所から特別送達により訴状が自宅に届きます。自宅が明らかでない場合は、勤務先に届くこともあります。そのため、同居人や同僚に不倫の事実がばれるリスクがあります。
無視すると請求どおりの判決が確定する
訴状と一緒に呼出状が同封されているのがほとんどです。呼出状に記載された期日に裁判所に行かず、答弁書も提出しないと請求どおりの判決が確定します。
月1回の期日に出席しなければならない
裁判期日はおおよそ1か月に1回のペースで平日に開かれます。都度、スケジュールを調整しなければなりません。
書面作成が手間になる
裁判では、主張・立証を書面で行うのが原則です。そのため、書面作成に手間や時間を要します。
訴訟後は財産を差押えられる
判決が確定したり、強制執行承諾つき公正証書を作成していたりする場合は、強制執行の申し立てがなされ、財産が差押えられます。
差押えの条件
差押えの手続には、債務名義が必要です。
債務名義とは、不倫慰謝料の支払いに関する記載のある次の文書を指します。
- 判決正本
- 和解調書正本
- 家事調停調書正本
- 民事調停調書正本
- 家事審判書正本
- 公正証書正本
差押えられる財産
主に差押えの対象となる財産は次の2つです。
- 預貯金
- 給与
差押えの流れ
差押えの流れは次の図のとおりです。
不倫慰謝料を払わなくてもいいケース
次のケースでは、不倫慰謝料を請求されても支払いに応じる必要はありません。
時効期間の経過
不倫慰謝料の時効期間は、不倫の被害者が不倫の事実及び加害者を知ったときから3年、または不貞行為があったときから20年です。
時効期間が経過している場合は、不倫慰謝料の支払いに応じないことを伝え、消滅時効を完成させます。
不倫慰謝料の時効については次の記事も参考にしてみてください。
不倫慰謝料請求の消滅時効を解説!|ネクスパート法律事務所仙台オフィス
不倫の証拠がない
不倫の慰謝料請求は、不貞行為があったことを原則として請求できます。
不貞行為とは、配偶者のいる人が、配偶者以外の者と自由な意思で肉体関係を結ぶことです。
請求人が、肉体関係があったと証明できる証拠を確保していない場合は、不倫慰謝料を支払う必要はありません。
不倫慰謝料は破産しても免除されない?
自己破産をすると、不倫慰謝料は、基本的に支払いが免除されます。
ただし、不倫の態様が、破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(破産法第253条1項2号)に該当する場合は、免除されません。例えば、夫婦の平穏な家庭生活を破綻させることを目的として、夫婦の一方と積極的に性行為に及んだ場合です。
まとめ
不倫慰謝料を支払えない場合は、減額や分割払いの交渉が必要です。
しかし、当事者間での交渉は、感情的になりスムーズに進まないものです。弁護士に依頼をして、適正額での早期解決を目指しませんか。
納得のいく解決のためにも早めの弁護士への相談をお勧めします。