DVとは|該当する行為やDVで離婚する場合の慰謝料相場

DVに悩む女性

離婚の原因は様々ありますが、DVで悩んでいる方もたくさんいらっしゃると思います。あるいは、自覚がないだけで実はDVの被害者になっているケースもあります。今回は、そもそもDVとは何か、DV被害にあった場合にとるべき行動、DVで離婚する場合の慰謝料の相場などを詳しく解説してきます。

DVとは

DVとは「domestic violence」の略語で、家庭内暴力を意味します。日本にはいわゆる「DV防止法」という法律が制定させており、被害者を保護しようとしています。DV防止法によると、「暴力」とは身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼす暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動を言います。

【参考】配偶者暴力防止法 | 内閣府男女共同参画局

つまり、殴る・蹴るなどの行為のみならず、態度や言動なども「暴力」にあたる可能性があります。また、DV防止法では婚姻の届出をしている配偶者からの暴力はもちろんのこと、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含みます。そして、離婚した後であっても保護の対象になる可能性があります。

DVの種類や該当する行為

身体的DV

DVと聞いて一番最初に思い浮かぶのが身体的DVです。殴る・蹴るなどの身体に対する暴力がこれに当たります。そのほかには部屋に閉じ込める、体を紐などで縛り付ける、怪我をしているにもかかわらず病院へ行かせないなどの行為も身体的DVに当たります。

精神的DV

精神的DVとは、無視をする、悪口を言うなどの態度や言動によって被害者を精神的に追い詰める行為を言います。いわゆるモラハラです。精神的DVは、身体的DVとは異なり、必ずしも外傷が生じるわけではないので周りの人だけではなく、本人でさえ気が付かない場合があります。

経済的DV

経済的DVとは経済的自由を奪うような行為を言います。例えば、生活費を渡さない、貯金を勝手に使う、相手だけを働かせるなどの行為が該当します。平成30年の司法統計によると、「生活費を渡さない」という行為は妻側が申し立てる離婚原因として2番目に多い理由となっており、多くの家庭が金銭的な問題で離婚していることがわかります。(参考:婚姻関係事件数―申立ての動機別.PDF

性的DV

性的DVとは、性的自由を奪う行為を言います。例えば、一方的に性行為に及ぶ、避妊具の使用を拒むなどがこれに当たります。被害者が相談しにくいため、問題が深刻化してしまいやすい類型です。

社会的DV

相手を社会と隔絶させる行為を言います。例えば、家族付き合いや友人関係を制限する、携帯の内容をすべて見られるなどがこれに当たります。これも、そもそも社会から隔絶させる行為のため、周りへ助けを求めることが難しい類型です。

DVで離婚する場合の慰謝料相場

DVで離婚する場合の慰謝料の相場は50万円から300万円程度とされています。慰謝料の額はDVの頻度や期間、障害の程度、被害者の落ち度など様々な事情を総合的に考慮して決定されます。特に暴力によって後遺症が残るような怪我を負ってしまったなどのケースでは、相場以上の慰謝料が認められることがあります。

DVの対処法

DV被害者であることを認識する

先ほど記載した通り、自らがDVの被害者であることを自覚していない方もいます。長期間DVを受けているとDV行為を一種の愛情表現と錯覚してしまうこともありますので、少しでも違和感を感じた時は冷静に見極める必要があります。

身近な人・専門家に相談する

DVの種類によっては他人には相談しにくいものもありますが、一人で抱え込まないことが重要です。身近な人に相談しにくいという場合は、内閣府が運営している「DV相談プラス」や、身の危険を感じる場合には「警察」に相談しましょう。

また、DVによって離婚を目指す場合は、弁護士に相談することでその後の行動などを的確にアドバイスしてくれますので、心強い味方になってくれます。弁護士事務所によっては無料相談を実施しているところもあります。また、経済的に不安がある場合は、法テラスを利用することで3回までの無料相談や弁護士費用の建て替え制度の利用を検討しましょう。

※なお、当事務所では法テラスの民事法律扶助制度の利用を希望される方からのご相談は現在受け付けておりません。

DVの証拠を集める

DVの証拠を集めることでより有利に離婚を進めることができます。逆にDVの証拠が全くない場合、DVを証明することができず、ご自身の主張が認められない可能性もあります。特に調停や裁判によって離婚するケースでは、客観的にDVを証明できる証拠の有無が重要になります。

保護命令を申し立てる

DVなどの被害にあった場合には、裁判所に対して保護命令を申し立てることができます。これは、DV加害者を被害者やその子どもに近づかないようにする命令で、これに違反すると一年以下の懲役又は100万円以下の罰金が課されます。

【参考】DV|配偶者暴力等に関する保護命令申立て|裁判所

別居する

加害者と別居することでDV被害を物理的に不可能にします。また、別居することにより、冷静になって考える時間ができますので、関係を継続するのかどうかや離婚の準備をしたりすることができます。

DVの証拠になるもの

DVで離婚する場合の慰謝料はケースバイケースで、DVの発生事実やDVの程度などを客観的に証明する証拠が必要があります。DVの証拠として有効なものをご紹介します。

医師の診断書

病院で出してもらった診断書は信用度が高い証拠になります。問診はもちろん、レントゲンやCTの撮影も併せてすると、より詳細な診断書を出してもらえます。なお、診断書は診察を受けてから数年間であれば出してもらえることが多いです。過去に負った怪我なども、可能な限り遡って診断書を集めましょう。

警察などへの相談記録

警察やDVセンターなどの公的機関に相談したという記録も証拠になります。相談記録は相談先へ問い合わせると作成してもらえます。この相談記録も保存期間がありますので、できるだけ早めに問い合わせてください。

録音や動画データ

相手方からDVを受けている様子を撮影・録音したデータがあるとより強い証拠になります。しかし、撮影・録音していることがバレてしまうと相手を刺激してしまう危険性がありますので、慎重に行動する必要があります。撮影・録音する場合は相手に気が付かれないところにスマホやICレコーダーを設置しましょう。

メール・電話の記録

スマホやICレコーダーを使って撮影・録音するのが難しいという場合は無理せず、メールの保存や電話の録音という方法も有用です。メールや電話で直接DVに当たるような発言をしているときはもちろんのこと、相手方がDVを認める発言をしていたり、DVについて謝罪しているような場合も有効な証拠となります。

メモ・日記

証拠としては少し弱くなりますが、メモや日記を書いておくこともおすすめです。メモや日記を書く際には5W1Hを意識してより具体的に書くことがポイントです。また、DVを受けた日だけではなく、普段の日も記載しておくとより有効な証拠になります。

まとめ

DV被害は周りに相談することが難しいため、被害がなかなか表面化してこないという問題があります。配偶者の行動や言動に少しでも違和感を感じた際には一人で抱え込まず、身近な人や専門家に相談して対処していくことが大切です。また、離婚すると決めた場合であっても証拠集めや離婚手続きなど専門的な判断が必要になりますので、より有利に離婚を進めるために弁護士などの専門家に相談するのが良いでしょう。