配偶者の浮気が発覚した場合、配偶者と浮気相手に対して慰謝料を請求することができます。しかし、現在進行形や最近の浮気ではなく、過去の浮気だった場合には慰謝料を請求できるのかと疑問に思う方も多いでしょう。ここでは、過去の浮気の慰謝料請求について解説します。
過去の浮気で慰謝料を請求することは可能
過去の浮気であったとしても、慰謝料を請求できる要件を満たしていれば、慰謝料を請求することができます。
夫婦には貞操義務があるため配偶者以外の人と性交渉することは禁じられていることから、不貞行為の基準は「肉体関係の有無」であると考えられます。また、慰謝料を請求するには「不貞行為を証明できる証拠」が必要です。証拠がなければ不貞行為を立証することができず、相手が不貞行為を否定すれば慰謝料の請求が難しくなります。
そして、浮気があった時の夫婦関係の状態も慰謝料請求の可否に関係します。すでに夫婦関係が破綻していれば慰謝料を請求することはできませんが、浮気があった当時は夫婦関係が破綻していない状態であれば慰謝料を請求することができます。
こうした慰謝料請求の基本的な要件を満たしていれば、過去の浮気でも慰謝料を請求することができます。ただし、注意しなければならないのは「時効」です。浮気の慰謝料の時効に関しては、次の章で詳しく解説します。
過去の浮気で慰謝料請求できる期間
配偶者の浮気は不法行為であるため、不法行為によって受けた精神的苦痛への損害賠償として慰謝料を請求することができます。ただし、不法行為に対して慰謝料請求できる権利には時効があります。
不法行為に対する慰謝料請求の時効は、「被害や損害または加害者を知った時から3年」「不法行為の時から20年」と法律で定められています。(民法第724条)過去の浮気への慰謝料請求の時効は、上記の定めから次のように考えられます。
配偶者への請求は離婚成立から3年
配偶者へ慰謝料を請求する場合、離婚成立から「3年」が慰謝料請求の時効になります。時効の起算日は離婚成立日になります。そのため、離婚をした配偶者へ過去の浮気の慰謝料を請求するのであれば、離婚が成立してから3年以内に行う必要があります。
浮気相手への請求は浮気の事実と相手を知ってから3年
浮気相手に慰謝料を請求する場合、浮気の事実と浮気相手を知ってから3年が時効です。浮気の事実を知っていたとしても、浮気相手の特定に時間がかかるようなケースもあるでしょう。
この場合は浮気相手が特定されるまで時効のカウントは始まりません。ただし、浮気が始まった時点から20年経過すれば、不倫相手が特定できなくても時効が成立してしまうので注意が必要です。
20年以上前の浮気では慰謝料請求できない
配偶者が浮気していたことをずっと知らずにいた場合、20年を経過していなければ慰謝料を請求することができます。なぜならば、「不法行為の時から20年」という慰謝料請求の時効があるからです。反対に言えば、20年以上前の浮気の場合は慰謝料を請求できないということになります。
過去の浮気で請求できる慰謝料の相場
浮気の慰謝料の相場は、50~300万円といわれています。そして、過去の浮気に対する慰謝料請求だからといって慰謝料の金額は左右されることはありません。あくまでも浮気という不法行為への慰謝料請求になるため、浮気が何年前のことであるかという点は慰謝料の金額を決める判断材料にはならないのです。
浮気の慰謝料の金額の増減を判断する要素には、浮気の期間や浮気の悪質性、夫婦関係の状態などが挙げられます。浮気期間が長い場合や、浮気相手が妊娠したなど悪質性が高い場合、婚姻期間が長くて子どもがいる場合など、浮気によって受ける精神的苦痛が大きいと判断される要素が多いほど慰謝料は高額になります。
過去の浮気の時効を更新(中断)するには
浮気相手の特定や浮気の証拠を集めることに時間がかかってしまうケースや、浮気自体に気付くことへ時間がかかってしまったケースでは、慰謝料を請求できる権利の時効が迫ってしまっている可能性があります。浮気の慰謝料請求をできる権利の時効が迫っている場合には、「時効の更新(中断)」を早急に行うべきです。
時効の更新(中断)とは
時効の更新(中断)とは、時効が進むことを阻止するための方法です。2020年4月1日の民法の改正前には時効の更新を阻止する方法を「中断」と呼ばれていましたが、民法の改正後からは新しく時効が進行することを「更新」と呼ぶようになっています。
時効の更新を行えば、時効を改めて更新をした時点から時効が起算されることになります。つまり、時効が一度リセットされ、更新された時点から再び時効が進行するということです。
時効の更新(中断)を行う方法
時効の更新を行うための方法には、次の4つの方法があります。
- 債務の承認
- 内容証明郵便による催告
- 裁判での請求
- 仮押え・仮処分・差押え
債務の承認とは、債務があることを認めるという行為です。浮気の慰謝料の場合、配偶者や浮気相手に浮気の事実を認めてもらい、慰謝料の支払いに合意してもらうことを指します。ただし、このときに口約束では「言った・言わない」のトラブルになってしまうため、書面を作成することをおすすめします。
次に、裁判で請求をすれば時効は更新され、判決が出た後は10年という時効になります。しかし、時効が迫っていて裁判の請求をするような準備ができないようなケースもあるでしょう。この場合は、内容証明郵便で相手に慰謝料請求する旨を催告するという方法があります。
内容証明郵便は書面の内容や送付日、送付相手などを証明できる郵送サービスで、催告から6カ月時効の完成を猶予させることができます。仮押え・仮処分・差押えは、相手が慰謝料の支払いに合意して公正証書で合意書を作成している場合に行うことができる方法です。
過去の浮気で慰謝料請求するなら弁護士に相談
過去の浮気で慰謝料を請求したいと考えている場合、まずは弁護士に相談しましょう。過去の浮気の慰謝料請求は時効が迫っている可能性もあるため、早急に対応する必要があります。しかし、自分一人で慰謝料請求の準備を行うことは難しいものです。
準備中に時効が成立してしまっていたという事態を避けるためにも、専門家である弁護士のサポートを受けることをおすすめします。証拠集めや時効の更新、慰謝料請求などに関するアドバイスを受けることができます。
また、依頼すれば早急に時効の更新の手続きを行い、問題の早期解決に向けて交渉や裁判など全てを任せられるというメリットがあります。自分で交渉するよりも、慰謝料を高額な金額で請求できる可能性も高まるでしょう。
まとめ
過去の浮気も慰謝料を請求することができますが、時効があるので注意が必要です。離婚をしてから慰謝料を請求しようと考えていても、3年という期間はあっという間に過ぎてしまいます。また、時効まで時間があると考えていても、起算点の認識が誤ってれば慰謝料請求ができる権利を失ってしまいます。確実に慰謝料を請求するためにも、まずは弁護士に相談してみましょう。