離婚調停とは|離婚調停の手続や流れを解説!

夫婦間の話し合いで離婚できない場合は、離婚調停を申立てなければなりません。

この記事では、離婚調停の手続や流れについてご説明します。

 

離婚調停とは

離婚調停とは、家庭裁判所において調停委員と呼ばれる中立の第三者が介入し、夫婦の意見を調整しながら離婚に関する問題の解決を目指す手続です。

日本の法律上、離婚事件については、調停前置主義を取っており、原則として離婚裁判の前に調停手続を経る必要があります。

ここでは、離婚調停の流れや実際の利用件数についてご説明します。

離婚調停までの流れ

まずは夫婦間で離婚すべきか、離婚する場合はその条件について話し合いましょう。

離婚さえできればという思いから、十分な話し合いをせず、離婚条件が曖昧なまま離婚し、のちにトラブルになるケースは少なくありません。

話し合いがまとまらない場合はもちろん、話し合いに応じてもらえない場合などは、離婚調停を利用しましょう。

離婚調停で話し合う内容とは

離婚調停では、次の事項について話し合います。

  • 離婚するかどうか
  • (未成年の子がいる場合)親権をどのように定めるか
  • (未成年の子がいる場合)面会交流について
  • (未成年の子がいる場合)養育費について
  • 財産分与について
  • 離婚慰謝料について
  • 年金分割を行うかについて

 

また、夫婦のうち収入を多く得ている一方が生活費を家計に入れていない場合は、別途婚姻費用分担調停を申立てて、話し合う必要があります。

令和2年の離婚件数と離婚調停の件数

参考:統計でみる日本 人口動態調査|e-Stat

令和2年の全国の離婚件数は19万3253件、そのうち調停離婚は1万6134件でした。また、同年の宮城県の離婚件数は3,553件、そのうち調停離婚は334件でした。

調停離婚の件数は、全体の約8.3%であり、そう多くない印象です。しかし、これは調停で離婚が成立した件数です。同年の離婚調停の申立件数は、全国で4万1037件、仙台家庭裁判所(支部を含む)では、785件でした。また、係属している案件が同等数あるため、実際にはもっと多くの方が離婚調停を利用しています。

参考:司法統計 令和2年 家事事件 第9表 家事審判・調停事件の事件別新受件数|裁判所

離婚調停が成立するまでの期間

参考:司法統計 令和2年 家事事件 第5表家事審判・調停事件の審理期間別既済、未済件数|裁判所

家事審判及び調停事件の平均審理期間は、6.7ヶ月です。離婚調停も同様と考えられます。

早ければ、3ヶ月以内に解決することもありますが、約7割が半年以上の期間を要しています。

離婚調停が向いているのはこんなとき

次のような場合は、離婚調停を申立てた方がよいでしょう。

夫婦間の話し合いがまとまらないとき

夫婦の一方または双方が感情的になり、話し合いにならない場合や、主張する離婚条件が異なり、話し合いがまとまらない場合は、調停委員という意見の調整役がいる調停手続を利用するとよいでしょう。

相手が離婚に応じてくれないとき

一方が離婚したいと思っていても、他方が離婚に応じなければ、離婚は成立しません。離婚に応じてもらえない場合や、全く話を聞いてもらえない場合は、第三者が介入することで話し合いに応じてもらえる可能性があります。

身体的、精神的な虐待があり離婚協議が困難なとき

DVやモラハラが横行している場合は、離婚を切り出すことが難しいでしょう。離婚を申し出る場合は、親族や弁護士などの第三者によって離婚意思を伝え、身の安全を確保したうえで離婚調停を利用して話し合うとよいでしょう。

離婚条件として財産分与に争いがあるとき

夫婦の一方が財産の開示に応じない場合は、裁判所の職権で財産情報を開示させる制度があるため、調停手続を利用するとよいでしょう。

 

離婚調停のメリット

離婚調停には次のようなメリットがあります。

相手方と冷静に話し合いができる

離婚調停では、調停委員が介入することで冷静に話し合いができます。また、基本的に調停では、調停委員が夫婦の話を交互に聞き、待合室も別に用意されているため、夫婦は顔を合わさずに話し合いを進められます。

妥当な条件で離婚ができる

調停委員は、夫婦双方が合意できるように妥当と考えられる解決案を提示してくれるため、明らかに一方が不利になる条件での離婚は避けられます。

調停調書に基づき強制執行ができる

調停で決まった内容は、裁判で確定した判決と同様の効力があります。慰謝料、養育費、財産分与などの支払いが滞った場合には、給与や預貯金などの差押えができます。

離婚調停のデメリット

離婚調停には次のようなデメリットがあります。

時間がかかる

双方が合意しない限り調停は成立しないため、一方が離婚を拒否したり、離婚条件に争いがあったりすると解決までに長時間を要します。

特に親権や財産分与などに争いがある場合は、解決までに1年以上かかることがあります。

また、調停は月1回、平日の日中に開催されるため、仕事のスケジュールを調整しなければなりません。

必ず離婚ができるとは限らない

離婚調停を申立てたからと言って必ず離婚ができるわけではありません。

調停は話し合いの場にすぎず、強制力はないからです。相手方が出席しなかったり、解決しないまま調停が終了したりすることもあります。

令和2年の離婚調停終結件数2万9646件のうち9999件が調停不成立となっています。

参考:司法統計 令和2年 家事事件 第14表婚姻関係事件数-終局区分別|裁判所

調停成立後は不服申立てができない

一旦調停が成立すると、調停の内容に対する不服申立てはできません。

納得できない点や疑問な点は、調停が成立する前に解消しましょう。どうしても合意できないときは、調停を成立させずに離婚裁判に持ち込みましょう。

 

離婚調停の流れ

一般的な離婚調停の流れは次のとおりです。

以下で詳しくご説明します。

離婚調停の申立て

離婚調停の申立ての方法は次のとおりです。

申立書の提出先

調停申立書等の提出先は、相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定めた家庭裁判所です。

申立費用

申立てに必要な費用は次のとおりです。

  • 収入印紙

手数料として1,200円分を収入印紙で納めます。

  • 郵便切手

裁判所からの申立人と相手方への連絡用の郵送代として納付します。総額と内訳は、裁判所によって異なります。

仙台家庭裁判所の場合は、次のとおりです(令和2年4月20日改訂版)。

必要書類

申立時に家庭裁判所に提出する書類は次のとおりです(ここでは、仙台家庭裁判所の書式を参考にご紹介します。)。調停の際に手元に控えがあると便利なので、提出した書類はすべてコピーを取っておくとよいです。

  • 夫婦関係調整調停申立書 原本とその写し各1通

原本は家庭裁判所、写しは相手方分として提出します。

申立書の書式は裁判所のホームページに掲載されています。また、家庭裁判所には複写式の専用用紙が設置されています。

参考:夫婦関係等調整調停申立書|裁判所

  • 事情説明書

参考:事情説明書(離婚または夫婦関係円満調整)|裁判所

  • (未成年のお子さんがいる場合)お子さんについての事情説明書

参考:お子さんについての事情説明書|裁判所

  • 進行に関する照会回答書

参考:家庭裁判所への申立て等で使う書式例|裁判所

  • 送達場所等の届出書

参考:家庭裁判所への申立て等で使う書式例|裁判所

  • 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書) 1通
  • (年金分割について話し合いが必要な場合)年金分割のための情報通知書 1通

管轄の年金事務所にて取得が可能ですが、請求から取得までに2週間から1ヶ月程度かかるため、余裕をもって請求するとよいでしょう。

  • (養育費を求める場合)源泉徴収票や確定申告書、給与明細の写しなど収入がわかる資料
  • (財産分与を求める場合)不動産がある場合は、登記事項証明書及び固定資産評価証明書、預金通帳の写しなどの財産がわかる資料

 

なお、収入資料や財産資料などは、申立時に間に合わなければ、調停を進めていく中で提出したり、追加提出を求められたりする場合もあります。

裁判所から離婚調停の期日通知書が届いたら

裁判所から調停期日通知書が届いたということは、離婚調停を申し立てられたということです。

必ず開封し、調停期日や調停申立書の内容を確認しましょう。

調停期日の確認

なるべく指定された日時に出席できるようスケジュールを調整しましょう。

期日の変更の調整は容易でなく、変更後の日時が1ヶ月先になることもあり、それだけで解決までの時間が伸びてしまいます。

調整が難しい場合は、同封されている進行に関する照会回答書(相手方用)という書面に出席できない旨とその理由を記入して裁判所に提出します。直接裁判所に連絡して期日変更を依頼してもよいです。

調停申立書の確認

申立書には、申立人の離婚したい理由や離婚条件が記載されています。

調停申立書を受け取ると、第1回調停期日までに、答弁書もしくは意見書を提出しなければなりません。答弁書(意見書)には、申立書に記載されている内容に対する意見や反論、離婚に対する考えなどを記載します。

調停期日通知書には、答弁書(意見書)の提出期限が記載されていますので、期限内に提出するようにしましょう。

離婚調停期日の流れ

調停期日当日は、遅れないよう時間に余裕をもって家庭裁判所に着くようにしましょう。

調停係の書記官室(仙台家庭裁判所は所内の5階にあります。)で受け付けを済ませると、待合室に案内されます。その後、調停室に案内され、申し立てた経緯や理由について確認されます。

次に相手方が調停室に案内され、申立てに対する意見や反論、離婚に対する考えなどの確認がなされます。

申立人と相手方が交互に2往復くらい話を聞かれます。

最後に次回期日の調整や追加資料の提出を求められることがあります。1回の調停期日にかかる時間は2時間程度と思っておくとよいでしょう。

離婚調停による解決

調停期日は月1回ほどのペースで終了するまで複数回開かれます。

話し合いがまとまり、夫婦がそれぞれの条件に合意した場合には離婚調停が成立し、裁判所によって調停調書が作成されます。

また、話し合いがまとまらず、離婚調停が不成立となった場合でも、裁判所が離婚相当と判断した場合は審判に移行します。これを調停に代わる審判といいます。調停に代わる審判も調停調書と同様の効力があります。ただし、調停に代わる審判に不服がある場合は、審判の告知を受けた日から2週間以内に異議の申立てができます。

離婚届の提出

離婚調停により離婚が成立したら、10日以内に裁判所により作成された調停調書離婚届を最寄り市町村役場に提出しなければなりません。

婚姻時の本籍と異なる市町村役場に届け出る場合は、戸籍謄本の提出も必要です。

離婚調停が不成立となった場合

離婚調停で話し合いがまとまらない場合は、調停は不成立となり、離婚が成立しないまま調停手続は終了します。

調停不成立となった後は、もちろん夫婦で話し合いを再開してもよいでしょう。また、調停の申立ては何度行ってもよいため、離婚の意思や条件などを整理して、再度離婚調停を申立ててもよいです。

しかし、話し合いや調停での解決が難しいと判断した場合は、離婚裁判を提起しましょう。

調停不成立の日から2週間以内に離婚裁判を提起した場合、訴訟費用から調停申立時に納めた手数料(印紙代)1,200円が控除されます。

離婚調停を弁護士に依頼するメリット

離婚調停では、弁護士に依頼しても基本的にご本人も調停期日に出席しなければなりません。調停委員もいるし、結局自分も調停に出席するならひとりで対応できそうと考える方もいると思います。

しかし、離婚調停を弁護士に依頼することで次のようなメリットがあります。

交渉を有利に進め、早期解決に導く

離婚調停では、調停期日の当日に相手方の意見を聞かされることが多く、予想外の意見や条件を提示されることがあります。ご自身だけでは、うまく意見を伝えられず不利な状況になったり、要点をまとめることができずに回答を先延ばしてしまい、調停が長期化してしまったりすることもあります。

弁護士に依頼すれば、弁護士が調停期日に同席します。論点を整理しながら、調停委員や裁判官に対して効果的な主張を行えます。

誤った判断をせずに済む

調停委員は、話し合いを仲介する立場なので、味方になってくれる存在ではありません。調停を成立させるために双方の意見の中間を取って勧めてくることもあり、必ずしも最良の提案をしてくるわけではないのです。

弁護士に依頼することで、より良い条件を見極め、有利な解決が可能です。

離婚後に起こりうるトラブルを未然に防げる

調停の席では、争いが表面化していない問題も弁護士の知識や経験から離婚後に起こりうるトラブルに備え、先を見越したアドバイスができます。

自分で離婚調停の対応をしても問題無いケース

夫婦間で離婚することや離婚条件の大部分は合意できているものの、金額などの細かい部分で話し合いがまとまらない場合は、離婚調停を申し立てて、自分で対応しても問題ないでしょう。

また、離婚さえしてくれればどんな条件でも呑むつもりだが、相手方が話し合いに応じてくれないという場合も自分で対応して問題ないでしょう。

ネクスパート法律事務所仙台オフィスに離婚調停を依頼した場合の費用

ネクスパート法律事務所仙台オフィスにご依頼された場合の弁護士費用は、「弁護士費用」のページをご参照ください。

 

まとめ

夫婦間での離婚協議がうまくいかない場合は、離婚調停を申し立てる必要があります。

ご自身で対応するには、書面を作成する手間や時間がかかったり、調停時の咄嗟の判断が難しかったりする場合があります。

納得のいく解決のためにも、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。