離婚をする際、どんな場合でも慰謝料を請求できる訳ではありません。離婚の条件を話し合うときには、どのような場合に慰謝料を請求できるのかを理解しておく必要があります。
この記事では、離婚慰謝料を請求できる条件について解説したうえで、具体的なケースごとに慰謝料を請求できるのかについても解説します。離婚の慰謝料請求を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
離婚慰謝料を請求できる条件とは
離婚の慰謝料を請求するためには、どちらか一方に離婚の原因・責任があると言える場合であることが必要です。離婚の原因が、どちらにあるとも言えないような場合には慰謝料は発生しません。
離婚の慰謝料は、離婚による精神的苦痛を慰謝するために発生するものです。そのため、慰謝料が発生するのは、どちらかが相手方に精神的苦痛を与えたと言える場合でなくてはなりません。
離婚の慰謝料が発生するケース例と慰謝料相場
ここでは、離婚の慰謝料が発生する3つの代表的なケースについて、慰謝料が発生する理由と、慰謝料の相場を解説します。
不貞行為
離婚の慰謝料が発生する最も代表的なケースは、相手方に不貞行為があった場合です。夫婦には貞操義務があり、その義務に違反して不貞行為を行った場合は、相手方に精神的苦痛を与えるため、それに対する慰謝料が発生します。
不貞行為を理由として離婚する場合の慰謝料相場は100〜300万円ほどです。慰謝料の金額は、次の事情を総合的に考慮して決められます。
- 不貞行為の期間・回数
- 婚姻期間の長短
- 子どもの有無・年齢
- 不貞行為による妊娠・出産の有無
- 不貞行為により相手方にどのような影響を与えたか
- 経済状況
たとえば、不貞行為の期間が何年間にもわたり、浮気相手との間に子どもまで産まれているといった事情があると慰謝料の額は高額になります。
DV、モラハラ
相手のDVやモラハラを理由として離婚する場合にも慰謝料を請求することができます。DVは、相手を肉体的にも精神的にも傷つける行為であり、モラハラは相手を精神的に追い詰める行為であるため、それら精神的・肉体的苦痛に対する慰謝料が発生します。
DV、モラハラを理由として離婚する場合の慰謝料相場は50〜300万円ほどです。DVやモラハラは、内容や頻度もその事案によって様々であるため、相場にも大きな幅があります。具体的に金額を決める要素としては、次のようなものが挙げられます。
- DVやモラハラの内容
- DVやモラハラが続いている期間、頻度
- DVやモラハラが相手に与えた影響
- 経済状況
モラハラについては、慰謝料の金額だけでなく、モラハラにあたるかどうかの判断すら難しい場合もあります。モラハラを理由として離婚の手続きを進めるのに不安のある方は、一度、弁護士に相談してみることをおすすめします。
悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、婚姻関係にあるにもかかわらず同居を拒否したり、生活費を渡すことを拒否したりすることを言います。悪意の遺棄がある場合も、相手に精神的苦痛を与えることになるため慰謝料が発生します。
悪意の遺棄を理由として離婚する場合の慰謝料相場も50〜300万円ほどです。慰謝料の金額を決める要素としては、別居の期間や、生活費を渡していなかった期間などが挙げられます。
離婚の慰謝料が発生しないケース例
ここでは、慰謝料が発生しない離婚理由について具体的に解説していきます。なお、慰謝料が発生しないケースであっても、財産分与や養育費については、慰謝料とは別に考えられるものなので、離婚の際に金銭についての話し合いが一切なくなるということではありません。
性格の不一致
性格の不一致は、離婚の理由として最も多いものです。しかし、性格が合わないというのは、どちらか一方に責任があることではなく、一方の責任とすることはできません。そのため、性格の不一致を理由とする離婚では慰謝料は原則発生しません。
親族との不仲
両親や兄弟など親族との不仲を原因とする離婚も珍しいことではありません。このケースでも、どちらか一方に原因があるということはできないでしょう。そのため、親族との不仲を理由とする離婚でも慰謝料は発生しません。
たとえば、夫の家族とだけ仲が悪いという場合であっても、夫に原因があるとして、夫に対して慰謝料を請求するということはできません。
宗教上の理由
宗教上の理由で離婚する場合でも、慰謝料は発生しません。どのような宗教を信仰するかについては、個人の自由です。そのため、宗教を信仰している側に離婚の責任を負わせることはできません。
理由があっても離婚慰謝料を請求できない場合とは
不貞行為など慰謝料を請求できる理由があったとしても、必ず慰謝料を請求できるわけではありません。ここでは、慰謝料請求の理由があっても慰謝料を請求できない4つのケースについて解説します。
婚姻関係がすでに破綻していた
不貞行為など慰謝料発生の原因となる事実があっても、不貞行為の前から夫婦関係が破綻していた場合には、不貞行為によって精神的苦痛を受けるということはないため、慰謝料請求は認められません。
つまり、不貞行為で慰謝料請求をするためには、不貞行為によって円満な夫婦関係が傷つけられたということが必要です。一方、DVについては、夫婦関係が破綻していたとしても、実際に肉体的な苦痛を伴うものなので、慰謝料は発生します。
証拠がない
慰謝料を発生させる事実があったとしても、相手がその事実を認めない場合、証拠による立証がなければ慰謝料を請求することはできません。慰謝料を請求するためには、その事実を証明するための証拠が必要です。
離婚にかかわる証拠は、集めるのが大変なことも多くあります。慰謝料請求のためには、相手のプライバシーに配慮しつつも、できる限りの証拠を集めることが重要です。
支払い能力がない
そもそも相手に支払能力がなければ、慰謝料の支払を受けることはできません。離婚の際には、相手方の勤務先や預貯金などから、支払い能力の有無を確認しておくことが重要です。
時効を迎えている
慰謝料請求が時効となった場合にも慰謝料請求は認められません。離婚の慰謝料請求の時効は、原則として離婚のときから3年間です。時効が過ぎてから、慰謝料を請求したいと考えても、どうすることもできないので、慰謝料請求を検討されている方は、早めに行動するようにしましょう。
まとめ
離婚の慰謝料が発生する場合について解説しました。離婚の際の慰謝料は、必ず発生するものではありません。性格の不一致など離婚原因として多いものであっても慰謝料が発生しないケースもあります。また、慰謝料が発生するケースであっても、具体的な慰謝料の金額については、様々な事情を考慮して判断されるため、算定は難しいです。
そのため、離婚の際に、そもそも慰謝料を請求することはできるのか、できるとしてどの程度の金額を請求できるのかについてお悩みの方は、一度弁護士までご相談ください。ネクスパート法律事務所仙台オフィスでは、無料での法律相談もお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。