不倫慰謝料が増額される12の項目|増額のコツをご紹介

不倫慰謝料は、不倫発覚により被った精神的苦痛を金銭に換価し、その損害を償ってもらうものです。不倫をした配偶者や不倫相手に対して請求します。しかし、不倫慰謝料の金額算定には明確な基準がありません。弁護士介入のもとでは、裁判例に沿った相場をもとに個別様々な事情を考慮し、算出します。

この記事では、より高額な不倫慰謝料を得るための増額のコツをご紹介します。

不倫慰謝料の相場

不倫慰謝料の相場は、数十万円~300万円です。不倫が原因で離婚するかしないかによって金額が異なります。以下でご説明します。

不倫が原因で離婚しない場合

不倫が発覚しても離婚しない場合の慰謝料の相場は次のとおりです。

離婚はせず、夫婦生活を継続する場合

慰謝料の相場は、50万円~100万円です。

離婚はしないが、別居した場合

慰謝料の相場は、100万円~200万円です。

形式上、婚姻関係が継続していても夫婦関係が破綻している場合は、離婚する場合と同等の金額になります。

不倫が原因で離婚する場合

慰謝料の相場は、100万円~300万円です。

 

 

なお、いずれもこの相場は裁判上のものです。

当事者同士で合意ができた場合や交渉次第では、相場以上の金額になることがあります。

不倫慰謝料の増額事由12項目

不倫慰謝料の具体的な金額の算出には、個別の様々な事情を考慮します。

次の12項目のいずれかに該当する場合は慰謝料の増額の可能性があります。以下でご説明します。

夫婦関係の悪化

不倫慰謝料の相場でわかるとおり、夫婦が離婚や別居、離婚協議を開始するなど、不倫が夫婦関係に深刻な影響を与えた場合、夫婦関係を継続させる場合に比べ慰謝料が高くなります。

不倫関係の継続

配偶者のある者が、配偶者以外の者と自由な意思で肉体関係を結ぶことを、不貞行為といいます。この不貞行為が1回だけでなく、継続している場合は不倫慰謝料の増額に繋がります。特に、不倫発覚後も不貞関係が継続している場合は増額の可能性が高まります。

不貞行為の継続の事情によっても、次のように悪質性の評価が異なります。

単なる継続

不倫発覚後も不貞関係を継続している場合は、不貞関係を解消した場合に比べ慰謝料を増額できます。

交際をやめるよう要請したにもかかわらず継続

交際をやめるよう配偶者が要請したにもかかわらず、不貞関係が継続している場合は、単に継続した場合よりも悪質性が高いと評価され、慰謝料の増額に繋がります。

交際をやめると約束したにもかかわらず継続

不倫関係の解消を約束したにもかかわらず、約束をやぶり不貞行為を継続した場合はさらに慰謝料の増額が期待できます。不倫関係解消を誓約した書面があると証拠として有効です。

不倫期間の長さ

不倫期間が長期であればそれだけ配偶者の被る精神的苦痛が大きくなります。具体的には、不倫期間が1年程度をもって増額事由として評価した判例があります。

不倫期間に対する不貞行為の回数や頻度

不倫期間に対して、不貞行為の回数や頻度を重視した判例があります。次の2例を紹介します。

不貞行為の回数や頻度よりも不貞期間の長さを重視した判例(東京地裁平成28年11月25日)

不貞期間が約21年以上と長期間であり、不貞行為の回数よりも期間を重視し、不貞関係が継続していた期間が長期に渡っていたことによって配偶者が精神的苦痛を覚えていたことは明らかとして慰謝料増額の事由と評価しました。

不貞期間よりも不貞行為の回数や頻度を重視した判例(東京地裁平成30年2月20日)

不貞期間は約2か月と短いものでしたが、その間、不貞行為が合計14回あり、その後も不貞関係を継続していた事情が慰謝料増額の事由と評価しました。

 

いずれの判例も悪質性の高さが慰謝料増額のポイントです。

婚姻期間の長さ

婚姻期間が長ければ長いほど、円満だった夫婦関係を破壊されたことによる精神的苦痛は大きいと評価されます。

具体的には、婚姻期間が約15年であったことを長期と認定している判例があります。また、婚姻期間が4年以上であれば婚姻期間が一定期間継続していると判断し、一定程度慰謝料の金額に反映している判例が複数あります。

夫婦間の未成熟の子の存在

夫婦の間に未成熟の子がいる場合、夫婦関係のみならず離婚後の子の監護養育への精神的プレッシャーや子自体に及ぼす悪影響が考慮されるため、慰謝料が高額となる傾向です。

婚姻関係に問題がなかったこと

不倫関係があった当時、夫婦関係に問題はなかった事実は、不倫発覚により悪化した夫婦関係と対比すると、その落差が大きく精神的苦痛が大きいと評価されます。

不倫関係によって受けた被害の大きさ

不倫慰謝料は、不倫によって被った精神的苦痛の程度が金額に影響します。

夫婦間の子への影響

不倫が夫婦間の子や、子との生活状況に悪影響を及ぼす場合は、配偶者の精神的苦痛も大きいと評価されます。例えば、次の場合は慰謝料増額事由となります。

  • 不倫発覚後、夫婦の不和が子の心身に影響を及ぼしている
  • 夫婦の別居に伴い、子とも別居しなければならない

不倫をされた配偶者の心身の変調や通院

不倫発覚後、配偶者の心身に変調をきたし通院を余儀なくされた場合は、慰謝料の増額事由となります。

不倫関係による子の妊娠や出産

不貞行為の結果、妊娠や出産をした場合は、夫婦関係に与えるダメージは大きいと評価されます。

不倫相手の経済的利益の受給

不倫していた配偶者が、不倫相手を経済的に援助していた場合、金額によっては慰謝料増額事由となります。以下で2つの判例を紹介します。

  • 不倫相手が、既婚の交際相手から1000万円を受け取った(東京地裁平成28年2月26日判決)
  • 不倫相手のマンション購入資金を既婚の交際相手に援助してもらった(東京地裁平成28年12月22日判決)

不貞行為の場所

不貞行為の場所が夫婦の自宅であった場合、行為態様が悪質であり配偶者の精神的苦痛は相当大きいものと評価されます。

不倫の内容

交際開始当初から、交際相手を既婚者と認識して不貞行為を行っていた場合、確定的な故意があったと評価されます。

不倫相手の行動の悪質性

不倫相手の行動に悪質性が認められた場合は、慰謝料増額事由となります。例えば、次の判例があります。

不倫をされた配偶者への無配慮

夫婦関係の破綻について、不倫をされた配偶者には離婚原因がないにもかかわらず、不倫をした側が一方的に離婚を要求しました。不倫相手との子を妊娠したことをきっかけに夫婦が別居、不倫相手との同居を開始し、不倫相手と夫婦同様の生活を継続している様態が不倫をされた配偶者の心情を考慮しない悪質なものと評価しました(東京地裁平成28年4月21日)。

不倫の否定や不当な弁解

不貞行為を認めず不合理な弁解を行ったことや、不貞行為を否認したため訴訟提起せざるを得なかった事情を慰謝料増額事由と評価している判例が複数あります。

虚偽の事実の主張

慰謝料請求を受けたことで、次の虚偽の事実を主張したことが慰謝料請求増額事由と評価している判例があります。

  • 不貞行為はセクハラやパワハラによるものだと虚偽の事実を主張して慰謝料の支払を免れようとした(東京地裁平成28年3月25日)
  • 不貞行為により子を妊娠したと虚偽の事実を告げた(東京地裁平成28年10月28日)

不倫相手による離婚の働きかけ

次のように不倫相手の離婚の働きかけを慰謝料増額事由と評価している判例があります。

  • 不倫相手が、夫婦が離婚したほうが幸せになれるだろうと考えていたとしても、不貞関係を持つことを正当化するものではなく、夫婦以外の第三者である不貞相手が自分自身の考えに基づいて、夫婦を離婚させようと考え、離婚を指示することの悪質性は否定されない(神戸地裁赤石支部平成30年10月25日)
  • 不倫相手が交際中の配偶者に対して離婚を求め、交際相手の配偶者へ性交渉を誇示する、侮辱する内容のメールを送信するなどした行為は、不貞事案の中でも態様が悪質な部類に入る(東京地裁平成29年8月8日)

 

不倫慰謝料の増額のためのポイント

不倫慰謝料を増額させるポイントは次のとおりです。

不倫の証拠の確保

不倫慰謝料を請求するには、不貞行為があった事実を裏付ける証拠が必要です。

不貞行為の証拠だけでなく、次の証拠があると不倫慰謝料増額へ有利に働きます。

  • 不貞行為の期間や回数、場所まで把握できる客観的な証拠
  • 不倫発覚の前後で夫婦関係がどのように変化したかがわかる証拠
  • 不倫によって精神的な損害がどの程度だったかを裏付ける証拠

不倫慰謝料の相場と適正額の把握

不倫慰謝料は、相場と適正額が必ずしも同じではありません

不倫慰謝料の増額事由があるのに、主張せずに相場どおりの金額で解決させるのは心惜しいものです。

不倫慰謝料の相場を知ると同時に、これまでの夫婦関係や発覚した不倫関係、その経緯など一切の事情の整理が重要です。

不倫慰謝料請求を弁護士に依頼する

不倫慰謝料請求を弁護士に依頼するメリットは次のとおりです。

  • 不倫慰謝料の増額事由を見逃しません
  • 主張や証拠を出すタイミングによって不倫慰謝料増額を目指します
  • 裁判にするかどうかの判断ができる
  • 弁護士に依頼することで専門的な知識と経験からより有利な解決ができる

 

まとめ|不倫慰謝料請求はネクスパート法律事務所へご依頼ください

不倫慰謝料を適正な金額で得るには、これまでの夫婦関係や不倫関係、その経緯などを把握し、個別さまざまな事情に合った交渉が必要です。

適正額での早期解決のためにも、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。