離婚の慰謝料が払えない時の対処法

離婚の原因が自分にあった場合、慰謝料を配偶者から請求されることがあります。しかし、預金や財産が無ければ、慰謝料の支払いは難しくなってしまいます。

では、離婚の慰謝料が払えない場合には、どのように対処すべきなのでしょうか?ここでは、離婚の慰謝料が払えない場合の対処法だけではなく、支払わなかった場合のリスクについてもご紹介しています。

離婚の慰謝料が払えない場合の対処法

離婚の慰謝料を請求されたものの、慰謝料として支払える預金や財産がないようなケースもあるでしょう。離婚の慰謝料が払えない場合には、次の方法で対処することを検討しましょう。

減額交渉をする

どうしても慰謝料の支払いが難しいという場合には、相手に慰謝料を減額してもらうように交渉してみましょう。ご自身の給与や生活状況、預金などの状況によっては慰謝料を減額できる可能性があります。また、慰謝料の金額にはある程度の相場があり、高額すぎる慰謝料を請求されているような場合にも減額できる可能性があります。

分割払いを打診する

相手が減額交渉には応じてくれない場合や、ご自身が適切な金額を支払いたいと考えている場合には、分割払いを打診してみましょう。慰謝料の支払いは一括払いが原則ですが、協議ならば相手が合意すれば分割で支払うことが可能です。

ただし、分割払いは相手にとってリスクがあるので合意してもらえない可能性があります。必ず期日通りに支払う約束や、支払いが遅れた場合の遅延損害金などペナルティについての約束を行えば、合意してもらえるかもしれません。

離婚の慰謝料を減額できるケース

離婚の慰謝料を減額できるケースとは、適切ではない金額の慰謝料を請求されている場合です。離婚の慰謝料の相場金額は50~300万円と言われているため、それ以上の金額であれば相場よりも高額だと言えます。その場合は、相場の慰謝料金額を提示して交渉を行います。

離婚の慰謝料は、婚姻期間や子どもの有無、有責行為の悪質性など、離婚原因や夫婦関係を考慮した上で金額が決められるものです。そのため、ご自身の状況では慰謝料の金額がどれくらいが適切なのか弁護士に相談し、請求額が高額ならば減額できると考えられます。

自己破産をすると離婚の慰謝料は払わなくていい?

離婚の慰謝料を支払うことが決まっていたにも関わらず、その他に借金などもあれば支払いが厳しくなって自己破産しようと考えるケースもあるでしょう。自己破産とは、法律によって全ての債務が免責される手続きです。

自己破産をすれば借金だけではなく、未払いの家賃やクレジットカードの支払など全ての債務が免除されます。そして、慰謝料も債権扱いになるため、基本的には免責対象です。そのため、自己破産をすれば慰謝料は払わなくてもよくなる可能性があります。

ただし、自己破産手続きにおいて、慰謝料が「非免責債権」として認められるようなケースがあります。非免責債権とは破産しても免責されず、破産後も残る債務です。そのため、慰謝料が非免責債権になれば、他の債務が免責されても慰謝料は支払わなくてはなりません。

非免責債権については「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」や「破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」などが破産法第253条に規定されています。

離婚の慰謝料を支払わないリスク

離婚の慰謝料の支払いが難しいため、支払いを無視しようと考える方もいるかもしれません。しかし、離婚の慰謝料を支払わないことにはリスクがあります。離婚の慰謝料を支払わないリスクについて理解しておき、対処するようにしましょう。

裁判、訴訟される

離婚の慰謝料を支払わなかった場合、裁判で訴訟されるというリスクがあります。すでに協議で示談書を作成している場合であれば、その示談書が証拠として提出されます。そのため、裁判でも示談書通りに支払うように命じられる可能性があります。

裁判になれば費用もかかりますし、解決までに時間を要することになります。裁判が長くなるほど精神的にも負担は大きくなるため、協議で早期解決を目指す方が得策だと言えるでしょう。

財産の差し押さえ

裁判の和解や判決で慰謝料を支払うことが決まったものの、さらに支払わずにいれば強制執行により財産を差し押さえられてしまいます。財産は預金や自宅、車、給料などが挙げられます。差し押さえられた財産は換価され、慰謝料として相手に支払われます。

裁判をしなかった場合でも、示談の際に公正証書で慰謝料の支払いに関する合意書を作成しているようなケースもあるでしょう。強制執行許諾文言付きの公正証書を作成していた場合には、裁判をしなくても強制執行による差し押さえが可能になります。

なぜならば、この公正証書自体が裁判の和解書や判決書と同等の効力を持つからです。そのため、裁判をしていないからといって財産の差し押さえにあわないとは言いきれないため注意が必要です。

会社に慰謝料の未払いがバレる

慰謝料を支払わずにいて強制執行による財産の差し押さえを受けた場合、給与が差し押さえられる可能性があります。そうすれば、慰謝料を未払いにしていることが会社にバレてしまいます。給与が差し押さえられたからといって解雇や異動になるようなことはありませんが、あなた自身の会社での信用が低下してしまうことも考えられます。

遅延損害金がかかる

慰謝料の支払いが遅れれば、遅延損害金が発生します。遅延損害金とは債務不履行に基づく損害賠償金のことを指し、1日でも支払いが遅れた場合に発生するものです。示談の際に遅延損害金について取り決めを行っていれば、その取り決めに従って遅延損害金を支払うことになります。

遅延損害金を取り決めていない場合でも、遅延損害金を相手から請求されれば断ることはできません。示談書で遅延損害金について取り決めをしていなかった場合には、法律で定められている利率である「法定利率」が適用されます。(民法第419条)法定利率は年3%です。

慰謝料に加えて遅延損害金まで請求されれば、さらに支払いが厳しくなります。遅延損害金の支払いが難しい場合には、必ず慰謝料を支払うことを約束して相手に遅延損害金の免除を交渉しましょう。協議で相手が免除に合意すれば、遅延損害金の支払いは免除されます。ただし、裁判で遅延損害金の支払いが決まっている場合は、裁判所の判決通りに支払わなければなりません。

まとめ

離婚の慰謝料が払えないからといって無視していれば、裁判や財産の差し押さえなど多くのリスクが生じます。トラブルが大きくなってしまう前に、慰謝料の減額交渉や分割払いの相談を行いましょう。そもそも慰謝料の金額自体が適切ではない可能性もあるため、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

弁護士に相談すればご自身の場合の適正な慰謝料の金額を知ることができ、今後すべき対応の見通しをつけることができます。減額交渉が必要な場合は、弁護士に交渉を任せることも可能です。