夫のせいでうつ病に。離婚の慰謝料は請求できる?

結婚生活を続けていく中で、夫からストレスを受ける方は少なくないでしょう。家事や子育てを手伝ってくれないというストレスや不満もあれば、DVやモラハラ、不倫などのトラブルを抱える方もいます。

こうした夫の問題のせいでストレスを受け続ければ、うつ病などの精神的な病気を患ってしまうケースもあります。もし夫のせいでうつ病になってしまった場合には、離婚の慰謝料を請求できるのでしょうか?ここでは、夫のせいでうつ病になった場合の離婚慰謝料について解説していきます。

夫のせいでうつ病に。離婚の慰謝料は請求できる?

夫のせいでうつ病になってしまった場合、病気の原因である夫と離れるために離婚をするという選択肢もあります。夫婦の協議で離婚を進めるのであれば、理由は関係なく双方が同意すれば離婚することができます。また、相手が合意すれば慰謝料を受け取ることも可能です。

しかし、相手が慰謝料の支払いに合意しない場合には、最終的に裁判で争うことになります。この場合、不法行為があれば慰謝料の請求は認められますが、「夫のせいでうつ病になってしまった」という理由だけでは認められない可能性があります。

「夫のどのような行動や言動がうつ病を招いたのか」という点が重要です。離婚の慰謝料を請求できる夫の行為については次の項目で詳しくご紹介します。

離婚の慰謝料相場

慰謝料とは、不法行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償のことを指します。法律で金額が定められているわけではないため、慰謝料は請求者の言い値で請求されることになります。ただし、過去の裁判判例などから慰謝料にはある程度の相場があります。

相場金額は「50~300万円」程度です。夫婦の婚姻歴や子どもの有無、夫の収入、不法行為の悪質性などが慰謝料の金額に考慮されることになります。ご自身のケースでは慰謝料金額がどれくらいになるのか知りたいという場合には、弁護士の無料相談などを利用して確認してみてください。

離婚の慰謝料を請求できる夫の行為

離婚の慰謝料を請求できる夫の行為は、法律で定められている離婚理由である「法定離婚事由(民法第770条)」と重なる部分が多いです。慰謝料を請求できる夫の行為には、次のようなものが挙げられます。

DV

DV(ドメスティックバイオレンス)とは、殴る・蹴るなどの身体的暴力です。髪を引っ張る・物を投げつける・突き飛ばすなどの行為もDVに該当します。夫婦間でも他人に暴力を振るうことは不法行為であり、DVによって受けた精神的苦痛に対して慰謝料を請求することができます。

また、DVを受けたことが理由で通院した場合、通院費用も請求することが可能です。DVによる暴力は犯罪行為であり、刑事事件として暴行罪・傷害罪・脅迫罪などの刑事罰に該当する可能性があります。

モラハラ

モラハラ(モラルハラスメント)とは、言葉や態度による精神的な暴力です。身体的な暴力のDVとは異なり、目に見えない暴力なので、加害者自身がモラハラをしている自覚がないというケースも少なくありません。

暴言を吐く・怒鳴る・嫌味を言うなどという言葉の暴力だけではなく、無視する・わざと舌打ちやため息をついてくる・友人や親に会うことを制限するなど行動による精神的暴力も含まれます。

モラハラは人格を侵害する不法行為であり、モラハラを受けた精神的苦痛に対して慰謝料を請求することができます。

不貞行為

不貞行為とは、いわゆる「不倫」や「浮気」のことを指します。不貞行為は法定離婚事由のひとつであることから、夫婦には貞操義務があると考えられています。貞操義務とは、配偶者以外の人と肉体関係を持つことを禁じることです。

そして、不貞行為は法的に保護されるべき婚姻共同生活の平和の維持を侵害する行為だとされ、慰謝料を請求することができます。

不貞行為は共同不法行為(民法第719条)に該当するため、不貞をした配偶者だけではなく不倫相手にも慰謝料を請求することが可能です。

悪意の遺棄

夫婦は同居して互いに協力し、扶助しなければならないことが民法によって定められています。(民法第752条
この同居・協力・扶助の義務を正当な理由なく履行しないことを悪意の遺棄と呼びます。

例えば、妻に働くことを禁じているにも関わらず、十分な生活費を渡さずに生活苦へ追いやることは悪意の遺棄に該当します。

また、理由のない長期間の家出や、不倫相手と一緒に住んで帰ってこない、なども悪意の遺棄だと言えます。悪意の遺棄も不法行為に該当するため、離婚する際には慰謝料を請求することが可能です。

性格の不一致でうつ病になったら慰謝料は請求できる?

離婚理由の中でも「性格の不一致」は、最も多い離婚理由でしょう。性格が合わなければストレスや不満が蓄積されていくため、精神的に不安定になってしまうこともあるかもしれません。しかし、夫との性格の不一致が原因でうつ病になってしまった場合、慰謝料の請求は難しいと言えます。

なぜならば、性格の不一致はどちらか一方に非があるというわけではないからです。離婚に至った原因は双方にあると考えられてしまい、うつ病を主張しても慰謝料が裁判で認められることは難しいでしょう。そのため、離婚の慰謝料を請求するには性格の不一致だけではなく、相手に不法行為があったことが必要となります。

母親がうつ病で離婚したら親権は獲得できる?

子どもがいて離婚する場合、夫婦のどちらが親権を持つのか離婚時に決めなくてはなりません。子どもが幼いほど母親と暮らした方が良いという「母性優先の原則」という考え方があるため、原則的に親権においては母親が有利であると言えます。しかし、母親がうつ病の場合には父親が親権を持つケースがあります。

基本的に子どもの親権は、子どもを適切に監護して養育できると判断される側の親に任されることになります。そのため、うつ病が重度で子どもの養育が難しいという場合には、父親に親権が認められる可能性が高いです。

一方で、うつ病といっても軽度で日常生活に支障をきたさないという場合であれば、親権が認められる可能性があります。また、近隣に自身の親がいてサポートを受けられれば親権獲得に有利になると考えられます。

まとめ

夫のせいでうつ病になって離婚する場合、うつ病になった原因の夫の行為が不法行為であれば慰謝料を請求することができます。ただし、性格の不一致という理由では慰謝料を請求することができないため、モラハラや不貞行為などの不法行為がなかったか確認すべきです。

慰謝料が獲得できない場合でも離婚時には財産分与や養育費など獲得できる金銭があるため、少しでも有利に離婚するためにも弁護士に相談してみることをおすすめします。