不貞行為の慰謝料は配偶者と浮気相手双方から二重取りできる?

不貞行為で配偶者や浮気相手に慰謝料請求をする場合、両方から慰謝料を二重取りできるでしょうか。浮気をされた方にとっては、配偶者も浮気相手も両方ともが悪いため、慰謝料を二重取りできると考える方も多いでしょう。

しかし、原則として慰謝料の二重取りはできません。この記事では、配偶者と浮気相手の両方を相手として慰謝料請求する場合、どのような点に注意すべきなのかを解説します。

目次

不貞行為の慰謝料は原則二重取りはできない

不貞行為の慰謝料は、原則として二重取りできません。不貞行為の慰謝料を請求できる根拠は、精神的苦痛を与えられたことに対する、不法行為に基づく損害賠償請求です(民法709条)。

配偶者と浮気相手は、それぞれ損害賠償を支払う債務を負うことになりますが、これらの債務は、法律上、不真正連帯債務と呼ばれるものとなります。

不真正連帯債務では、債務者が債権者に対して、それぞれ全額の賠償責任を負いますが、いずれかの債務者が債務を履行すると、もう一方の債務者の債務はその分だけなくなります。

たとえば、浮気をされた側が、不貞行為の慰謝料として300万円を請求できるという事例では、配偶者と浮気相手それぞれに対して300万円を請求することが可能です。ただし、配偶者が200万円を支払った場合には、浮気相手に請求できるのは残りの100万円だけです。

つまり、慰謝料の支払を受けられるのは、配偶者と浮気相手を合わせて300万円までで、それぞれから300万円の支払を受けられるわけではありません。

不貞行為の慰謝料は配偶者と浮気相手どちらに請求するの?

不法行為の慰謝料は、配偶者と浮気相手のどちらに対しても請求できます。両方に対して同時に請求することもできますし、浮気相手から先に請求することも可能です。

配偶者と浮気相手の両方から、本来認められる以上の慰謝料を受け取ることはできないというだけで、請求の順番などは浮気をされた側が自由に決めることができます。

慰謝料の負担割合はどうやって決める?

配偶者と浮気相手の両方に慰謝料請求する場合、請求する側が負担割合を決める必要はありません。先ほどの事例では、配偶者に対しても、浮気相手に対してもそれぞれ300万円の請求ができます。配偶者に対しては200万円、浮気相手に対しては100万円などと、請求する側が割合を決めて請求する必要はありません。

不真正連帯債務では、配偶者も浮気相手も、それぞれが全額について債務を負うのであって、負担割合は配偶者と浮気相手との内部的事情に過ぎません。

負担割合が、配偶者は200万円、浮気相手が100万円という場合であっても、請求する側は、浮気相手から300万円を受け取ることができます。その場合、浮気相手は、負担割合を超える200万円を配偶者に請求することになります。

不貞行為の慰謝料で二重取りできるケースとは

不貞行為の慰謝料は、原則として二重取りできませんが、例外がない訳ではありません。ここでは、慰謝料の二重取りが認められる2つのケースを紹介します。

任意で慰謝料を支払う場合

配偶者と浮気相手が、それぞれ任意に慰謝料を支払う場合には、実際に請求できる金額が300万円であったとしても、それぞれから200万円ずつの合わせて400万円を受け取ることも可能です。法律上認められる金額以上の慰謝料を受け取ることは、支払う側の任意によるものであれば制限を受けることはありません。

離婚原因が他にもある場合

不貞行為が原因で離婚に至った場合で、離婚原因が他にもあるときには、配偶者に対しては、別途慰謝料を請求することができます。不貞行為の慰謝料と離婚の慰謝料とは重なり合う部分もありますが、DVなど離婚原因が他にもある場合には、不貞行為の慰謝料だけが離婚の慰謝料ということにはなりません。

不貞行為の慰謝料として配偶者と浮気相手から合わせて300万円を受け取った場合であっても、配偶者に対しては別途DVなど別の離婚原因に基づく慰謝料分の請求が可能です。

不貞行為の慰謝料を請求する方法

配偶者と浮気相手に慰謝料を請求する場合、二重取りは原則として認められないこと、請求する側は負担割合を考慮しなくて良いことなどを解説しましたが、実際に慰謝料を請求するには、どのような手順が必要なのでしょうか。ここでは、不貞行為の慰謝料を請求する手順について解説します。

不倫相手と直接話し合う

不貞行為の慰謝料を請求するには、まずは、配偶者や浮気相手と直接話し合うようにしましょう。話し合いの結果、相手方が慰謝料を支払うことに応じる場合には、示談書を締結するなどして、金額や支払い方法などを確定しておくことが重要です。

内容証明郵便などの書類で請求する

浮気相手が会ってもくれない、話し合いをしても慰謝料の支払いについて話がまとまらないというような場合には、内容証明などを相手方に送付し、慰謝料請求の意思を改めて相手方に伝えましょう。

内容証明の中身としては、慰謝料請求に応じない場合は、弁護士への委任や訴訟提起を検討しているなどといった、慰謝料請求に対する強い意志を示すことが重要です。

弁護士に交渉を委任する

当事者間での話し合いなどでは、話がまとまらない場合には、弁護士に交渉を委任することをおすすめします。弁護士は、法律の専門家で、交渉のプロなので、これまで慰謝料の請求に応じなかった相手であっても、請求に応じる可能性は十分にあります。

請求に応じないような場合であっても、弁護士が介入することで、裁判に向けての証拠の収集などを的確に行うことができるでしょう。当事者のみでは慰謝料の金額を決めること自体も難しいでしょうから、類似事例などから慰謝料の相場を知ることができるのも弁護士に交渉を委任する利点の1つです。

弁護士費用などを心配される方であっても、不貞行為の慰謝料請求を行う場合には、一度弁護士に相談することをおすすめします。どのような証拠を相手に示すべきか、慰謝料の相場はどの程度なのかといった情報を知るだけでも、相手方が請求に応じてくれる可能性は大きく変わります。弁護士法人ネクスパート仙台オフィスでは無料相談もお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。

裁判をする

弁護士に委任するなどして交渉しても、交渉がまとまらない場合には、裁判を起こすことになります。裁判で慰謝料請求が認められるためには、証拠が重要です。的確な主張を行ったうえで、不貞行為を証明できる証拠がなければ、慰謝料請求は認められません。

裁判で法律に基づく的確な主張を行い、適切な証拠によって自身の主張を証明するためには、法律の専門家である弁護士に訴訟の代理人を依頼することをおすすめします。

まとめ

不貞行為の慰謝料を二重取りすることができるか否かについて解説しました。慰謝料の二重取りは基本的に認められませんが、請求する側としては、配偶者に対しても、浮気相手に対しても慰謝料の全額を請求することができます。

請求する側としては、慰謝料の支払いが受けられるよう、配偶者と浮気相手両方に可能な限りの請求を行うことが重要です。

慰謝料の請求についてお悩みがある方は、一度、弁護士法人ネクスパート仙台オフィスまでお問い合わせください。慰謝料請求についてのご相談は初回30無料でお受けしております。

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