ダブル不倫の慰謝料請求の注意点とその相場

DVに悩む女性

ダブル不倫とは、既婚者同士の不倫のことです。

ダブル不倫が双方の家庭で発覚すると、夫婦関係が破綻し、交渉が泥沼化、さらには慰謝料が相殺されて一銭も手に入らないといった最悪な事態が起こる可能性があります。

この記事では、ダブル不倫の慰謝料請求について注意点や相場についてご説明します。

ダブル不倫の慰謝料請求

ダブル不倫の慰謝料請求は、2組の夫婦に被害者と加害者がそれぞれ存在し、双方の家庭に影響が及びます。そのため、単身者との不倫による慰謝料請求に比べて、考慮しなければならない点がいくつかあります。

以下で詳しくご説明します。

 

誰が誰に対して請求できるのか?

不倫による慰謝料は、不倫をされた配偶者が、不倫をした配偶者とその不倫相手に対して請求できます。ダブル不倫の場合も同様です。

そのため、ダブル不倫の場合は、慰謝料請求ができる配偶者が2人存在します。

上記の登場人物で例えると、不二子は不二夫と愛子に対して愛之助も不二夫と愛子に対して慰謝料請求できます。

 

ダブル不倫の慰謝料請求の注意点

ダブル不倫の慰謝料請求をする際は、単身者との不倫による慰謝料請求と異なり次の点に注意する必要があります。

 

不倫相手の配偶者から慰謝料を請求される可能性

上記図の登場人物を例にすると、不二夫と愛子の不倫が発覚し、不二子が愛子に対して慰謝料請求を行いました。その結果、愛之助も不二夫と愛子の不倫に気がつき、愛之助も不二夫に対して慰謝料請求してくるリスクがあります。

家計単位でみるとプラスマイナスゼロとなる可能性

双方の夫婦が離婚しない場合、お互いに慰謝料を請求すると夫婦の家計は同一と考えられるため、相打ちの関係になります。結果として、獲得する慰謝料額が家計全体でみると0円になるリスクがあります。

 

ダブル不倫の慰謝料請求で金銭的メリットが得られる場合とは

ダブル不倫でも、それぞれの夫婦関係の状況や不倫の経緯によっては、次のように金銭的にメリットを得られる場合があります。

逆に次のようなケースに当てはまらない場合は、慰謝料請求を行わない方がよい可能性があるため、見極めが必要です。

一方の配偶者に不倫の事実が知られていない

一方の夫婦の配偶者に不倫の事実が知らされていない場合は、知らせずに慰謝料を請求した方が金銭的に有利な解決ができます

例えば、愛之助に不倫の事実が知られていなければ、愛之助から不二夫への慰謝料請求を防ぐことになるからです。

一般的に、不倫をした配偶者は、他方の配偶者にその不倫の事実が知られれば、当然に離婚や慰謝料の請求をされるリスクがあるため不倫の事実を知られたくないはずです。

心情的には、不倫相手の配偶者にも不倫の事実を知らせたい気持ちになるでしょう。しかし、確実に金銭的に有利な解決を望む場合は、知らせない方が賢明です。

不倫により夫婦は離婚するが、一方の夫婦は離婚しない

不倫が原因で離婚する場合、離婚しない場合に比べて請求できる慰謝料の相場が高くなります。

不二夫不二子夫婦は離婚するが、愛之助愛子夫婦は離婚しない場合、不二子にとって金銭的に有利な解決ができます。そもそも離婚する場合、配偶者と家計が別となるので、家計への影響を考えずに交渉する場合もあります。

不倫相手の方が不倫関係に積極的だったと認められる

配偶者より不倫相手の方が不倫関係に積極的だったなど、不倫関係を継続する過程で不倫相手の責任が重いと考えられる場合は、慰謝料算定の増額事由になります。

よって、金銭的に有利な解決ができる可能性があります。

婚姻期間に差がある

婚姻期間が、不倫相手の夫婦より明らかに長い場合は、慰謝料算定の増額事由となり、金銭的に有利な解決ができる可能性があります。

双方が離婚する

双方の夫婦が離婚する場合は、配偶者と家計が分離するため、家計への影響を考えずに慰謝料請求ができます。

 

ダブル不倫の慰謝料の相場

不倫慰謝料の相場は、個別の事情や状況を考慮して金額を算出するため、明確な基準がありません。弁護士が介入する場合は、判例を参考にして金額を提示します。ダブル不倫の場合も同様です。

ここでは、ダブル不倫の場合の慰謝料の相場についてご説明します。

離婚するかしないかで慰謝料の相場が変わる

裁判上の相場は次のとおりです。

離婚するかしないかで、相場が変わるのはダブル不倫の場合も同様です。

 

さらに具体的な金額の算定には、次のような事情を考慮します。

  • 夫婦関係について(婚姻期間、夫婦生活について、子の有無・年齢や養育状況など)
  • 不貞関係について(経緯、期間、回数、場所、その他態様など)
  • 不貞関係発覚後の夫婦関係や子らに与えた影響 など

離婚しない場合は求償権に注意

求償権とは、不倫をした2人のうち一方が自身の責任部分を超えて慰謝料を支払った場合にもう一方に自己の責任を超えた部分について請求できる権利です。

つまり、不倫相手にのみ慰謝料を支払ってもらった場合、不倫相手が配偶者に対して支払った慰謝料のうちの半額を請求してくる可能性があります。

離婚しない場合は家計が一緒と考えられるため、不倫相手にせっかく慰謝料を支払ってもらっても、不貞相手が求償権を行使した場合、回収した金額のいくらかを返還することになります。

ダブル不倫の慰謝料請求の判例

ダブル不倫の慰謝料請求には次のような判例があります。

妻が夫の不貞相手に不倫慰謝料請求したケース

こちらのケースは、不倫相手の配偶者(夫)から慰謝料請求されたことで夫の不倫が発覚したダブル不倫ならではの事情があります。

また、本訴訟で不二子は愛子から慰謝料250万円の支払いを受けましたが、既に不二夫が愛之助に対して解決金250万円を支払っており、一家計でみると不二子の通院治療費及び交通費分のみしかプラスになっていません。しかし、愛子と愛之助が離婚したのに対し、不二子と不二夫は家庭内別居には至ったものの離婚はしていない点で、不二子にとって有利な判決であると言えます。

一方で、不二夫が愛子に対し、愛之助に支払った解決金250万円の半額の求償を求めています。しかし、愛子が不二子に対して同額の慰謝料を支払っているため、相殺の観点から認められる可能性は低いと考えられます。

夫が妻の不倫相手へ不倫慰謝料請求したケース

こちらのケースも不倫相手の配偶者(妻)から慰謝料請求されたことで妻の不倫が発覚しています。

本訴訟前に愛子から不二子に対し慰謝料請求されており、不二子に180万円の支払義務が認められましたが、本訴訟では愛之助に慰謝料200万円の支払義務を認めました。

本訴訟の方が高額となった理由は、不二夫が実父を亡くし、葬儀の準備や溜まった仕事のために多忙であったところ、愛之助は不二子を通じ、不二夫の状況を知っていたにもかかわらず、その間に不二子とホテルに宿泊し、性交渉に及んでいた事実が大きいと考えられます。

ダブル不倫の慰謝料を請求する手順

ダブル不倫の慰謝料請求は、慎重に進める必要があります。

むやみやたらに配偶者や不倫相手を問い質す前に、有効な証拠を確保し、今後の夫婦関係について検討すべきです。

以下でご説明します。

証拠を確保する

不倫慰謝料請求では、大前提として、配偶者と不倫相手の間に不貞行為(肉体関係)があったことを証明しなければなりません。

次のような証拠を確保する必要があります。

  • 不貞行為があったと推認できるメールやSNSなどのやりとり
  • 不貞行為中の画像や動画
  • ホテルや不貞相手の自宅を出入りする画像や動画 など

夫婦関係について検討する

離婚するかどうかによって慰謝料の相場が変わります。

また、離婚しない場合は、不倫相手と交渉の際に求償権についての取り決めを行う場合もあります。

今後の夫婦関係が慰謝料請求の重要なポイントとなるため、事前に検討しておきましょう。

相手方に慰謝料を請求する

証拠がそろい、今後の夫婦関係の方向性の検討ができたら、相手方へ慰謝料を請求します。

ダブル不倫で不倫相手の配偶者が不倫の事実に気付いていない場合は、メールやLINEなどを活用してやりとりが必ず残る方法で交渉しましょう。

不倫相手の配偶者に不倫の事実が明らかにされている場合は、書面により請求しましょう。

いずれも後に言った言わないの争いを防ぐためです。特に内容証明郵便で発送すれば、郵便局に書面の内容や送付した記録が残るため、相手方に受け取っていないなどと言い逃れされた場合でも発送したことが証拠として残ります。

ダブル不倫の場合の法律相談時の注意点

ダブル不倫について弁護士にご相談する際は、次の点に注意してください。

ご夫婦一緒のご相談の場合

ご夫婦一緒にご相談にいらした場合は、不倫相手への慰謝料請求についてのみのご相談対応となります。

不倫をされた配偶者は、不倫をした配偶者への慰謝料請求権があります。そのため、夫婦に利益の対立がある場合は、ご相談もお受けできない場合があります。

また、ご夫婦が一緒に相談にいらした後に、ご夫婦の一方から離婚事件などのご依頼もお受けできない場合があります。

交際相手と一緒のご相談の場合

不倫関係のお二人が一緒にご相談にいらしても、お二人の間に利益の対立がある場合は、ご相談をお受けできいない場合があります。

また、お二人が一緒に相談にいらした後に、一方への求償請求のご依頼もお受けできません。

 

まとめ

ダブル不倫の慰謝料請求では、不倫相手に慰謝料請求をすべきかを見極める必要があります。不倫相手の配偶者も不倫の事実を知っているかどうかが重要です。

やみくもに慰謝料請求をしても、金銭的なメリットを得られずに2組の家庭が崩壊してしまう恐れがあります。

弁護士に依頼するメリットは次の4つです。

  • 慰謝料請求で得られるメリットを冷静に判断できる
  • 相手方と直接会わずに解決できる
  • 相場に沿った解決ができる
  • 解決後のトラブルを未然に防げる

 

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