性格の不一致で離婚の慰謝料は請求できるのか

性格が合わない夫婦

離婚の原因として最も多いのは、性格の不一致によるものです。しかし、性格の不一致を理由とする離婚は無条件には認められません。ここでは、性格の不一致を原因として離婚する場合について、慰謝料などのお金の問題や相手が離婚に応じない場合の対処法を中心に解説していきます。

性格の不一致は離婚原因として最も多い理由

裁判所での手続における離婚では、性格の不一致が離婚原因として最も多い理由となっています。その割合は、夫からの申立ての場合には6割を超える数字となっており、妻からの申立ての場合にも半数近い数字です。もっとも、この割合は、申立ての動機を1件につき3個まで重複計上しての数字となっています。

つまり、離婚の主たる原因が性格の不一致以外の理由であっても、性格の不一致は他の理由と一緒に選ばれやすいということで高い数字になっているという事情はあるでしょう。夫婦で長年一緒に暮らしていると、価値観であったり、子どもの教育方針であったりと何かしら考え方や性格の不一致はあります。それが我慢できないほど積み重なったり、他の原因と重なったりすることで離婚にまで至るというケースが多いようです。

参考:司法統計からみた離婚

性格の不一致で離婚の慰謝料は請求できるのか

性格の不一致が原因で離婚する場合には、相手に慰謝料を請求することはできません。離婚の慰謝料は、不貞行為やDVを原因とする場合など、相手に責任があるときに発生します。性格の不一致は、夫婦どちらかに一方的な責任がある訳ではないため、性格の不一致を原因とする離婚では慰謝料請求が認められません。

性格の不一致で離婚する際に請求できるお金

性格の不一致が原因で離婚する際に慰謝料が請求できないとしても、お金の問題が一切なくなる訳ではありません。慰謝料以外にも、夫婦が離婚する場合には、次のお金の問題について決める必要があります。

  • 財産分与
  • 婚姻費用
  • 養育費

ここでは、それぞれについて具体的に説明します。

財産分与

離婚における財産分与とは、夫婦の共同生活において形成した財産について離婚の際に夫婦の寄与分に応じて分配することを言います。寄与分とは、夫婦がそれぞれ財産の形成にどのくらい貢献したのかというものですが、通常は、二分の一ずつと判断されることが多いです。

また、財産分与の対象となるのは、夫婦の共同生活において形成した財産ということになるので、婚姻前から持っていた財産や、夫婦生活とは関係なく取得した財産、離婚を前提とした別居後に取得した財産などは財産分与の対象にはなりません。財産分与の対象となるものの具体例としては次のものが挙げられます。

  • 現金
  • 預貯金
  • 保険の解約返戻金
  • 不動産
  • 自動車
  • 年金

他にも財産的価値のあるものは、財産分与の対象です。不動産など分けるのが難しいものは、その価格分を現金や預貯金で調整するなどして分与を進めることになります。

婚姻費用

婚姻関係にある夫婦は、婚姻生活を維持するために必要な生活費を分担する義務があり、この費用のことを婚姻費用といいます。離婚を前提として別居をしている場合であっても、婚姻関係にある限りは婚姻費用を分担しなくてはなりません。相手が婚姻費用を支払ってくれないときには、婚姻費用の分担を請求する調停を起こすことも可能です。

参考:婚姻費用の分担請求調停 | 裁判所

養育費

子どもの養育費についても、離婚原因とは関係なく決めておく必要があります。養育費は子どもの監護や教育のためのもので、離婚の原因が何であれ、子どもにとって必要なものだからです。

性格の不一致で一方的に離婚できる?

法律上の離婚原因は、民法770条に規定されているものに限られており、性格の不一致は法律上の離婚原因とはなりません。

第770条(裁判上の離婚)
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

引用元:民法第770条 – Wikibooks

そのため、性格の不一致を理由として一方的に離婚することはできません。性格の不一致を理由として離婚するためには、お互いの話し合いによる合意が必要になります。

性格の不一致で離婚してくれない時の対処法

相手が離婚に応じてくれない場合には、弁護士に交渉を依頼するのも1つの方法です。本人同士の話し合いでは相手が本気にしてくれずに話し合いが進まないということもありますが、弁護士に交渉を任せることで、相手にも本気度が伝わり、離婚について真剣に考えてくれる可能性もあるでしょう。

また、性格の不一致から不仲となり、長期間に及んで会話すらない状態が続いたり、別居状態となったりした場合には、民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるとして離婚が認められる可能性もあります。

本人では性格の不一致以外に離婚の原因を見つけられない場合でも、弁護士に具体的な状況を説明することで他に法律上の離婚原因が見つかることもあります。離婚原因についてお悩みの方は、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

性格の不一致で離婚を切り出す前に考えること

離婚の意思を相手に伝えると、程度の差こそあれ相手との関係が悪化することは避けられません。離婚話を切り出すには覚悟が必要です。子どものことや離婚後の生活などについて事前に十分考えたうえで、話し合いを進めるようにしましょう。

子どものこと

離婚が成立しても、子どもがいる場合には、相手との関係が完全になくなることはないでしょう。もちろん、子どもにとっても、父親、母親との関係はなくなるものではありません。離婚をしたら、親権や養育費の問題はどうなりそうか、子どもをしっかりと育てていけるのかということはもちろんのこと、子どもが両親の離婚をどのように受け止めるのかということも十分に考えておくことが必要です。

離婚後の生活

性格の不一致が原因で離婚する場合には、相手から慰謝料をもらうことができないため、離婚後の生活が経済的に成り立つのかをよく検討する必要があります。財産分与で不動産を取得するとしても、ローンを1人で負担できるのかを検討しなくてはなりませんし、引っ越しが必要ならば引っ越し費用の準備も必要です。

まとめ

性格の不一致を原因とする離婚の問題についてまとめて解説しました。性格の不一致は離婚原因として最も多いものですが、それだけでは法律上の離婚原因とはならず、慰謝料請求も認められません。性格の不一致を原因として離婚の話し合いを進めていくためには、他の離婚原因はないのか、慰謝料以外のお金の問題をどうするのかなど検討すべき課題があります。お困りのことがある場合には、一度、現在の状況について弁護士に相談してみてください。