配偶者の浮気が発覚し、慰謝料を請求したいと考える方は少なくありません。ですが、そもそも浮気とはどこからなのか、浮気の慰謝料が請求できるのはどういったケースか、などを知っている方は多くないでしょう。この記事では、浮気の慰謝料はどこから請求できるのかについて解説します。
浮気の慰謝料はどこから請求できる?
浮気により慰謝料を請求する場合、法律上は「不法行為に基づく損害賠償請求」をすることになります。そのため、浮気の慰謝料請求が認められるためには不法行為であると認められる必要があります。
不法行為(ふほうこうい)とは、ある者が他人の権利ないし利益を違法に侵害する行為。また、その場合に加害者に対して被害者の損害を賠償すべき債務を負わせる法制度である。
引用元:不法行為 – Wikipedia
また、浮気や不倫といった行為は法律上「不貞行為」と言います。不貞行為の定義としては、簡単に言うと「配偶者以外の者と肉体関係を結ぶ行為」です。ですので、浮気の慰謝料はどこから請求できるのかと言うと、基本的には「配偶者が他人と性的行為に及んだかどうか」が基準となります。
肉体関係がなく「一緒にご飯を食べた」「デートをした」などのケースでは、慰謝料が認められる可能性は低いでしょう。慰謝料が請求できないケースをもう少し詳しくご紹介します。
浮気の慰謝料を請求できないケース
不貞行為とは言えない行為
先ほど説明した通り、不貞行為とは、配偶者以外の者と肉体関係を結ぶ行為を言います。そのため、単に異性の友人と仲良くしているだけの場合や数回デートをした程度に留まる場合は不貞行為には当たりません。
逆に、肉体関係がない場合であっても、友人等との交流のために、家庭を顧みないと言えるような場合には慰謝料が認められる可能性があります。
婚姻、内縁関係にない
不貞行為は「配偶者以外の者」と肉体関係を結ぶ行為を言います。そのため、婚姻関係にないカップルに関しては不貞行為にはなりません。具体的には、男女が婚姻・内縁関係にない場合、あるいは肉体関係を結んだ時点で婚姻関係が既に破綻していたと言えるような場合も慰謝料が認められない可能性があります。
故意・過失がない
法律上の不法行為は、故意・過失があったときに成立します。つまり、既婚者だと知っていながら不貞行為に及んだかどうかがポイントとなります。これは慰謝料請求を配偶者に対して行う場合には基本的には問題とはなりませんが、浮気相手に対して慰謝料を請求する際に問題となり得る要件です。
中には自分が既婚者だという事を隠して浮気をする方もいます。この場合、浮気相手の方は「ただ普通に独身の方と交際をしているだけ」という認識ですので、故意・過失はありません。もちろん、既婚者だと隠していた配偶者に対しては慰謝料を請求できますが、浮気相手の方に対しては慰謝料が認められない可能性があります。
浮気の証拠がない
浮気(不貞行為)があったことが証明できる証拠がなければ、慰謝料の請求が認められない可能性があります。不貞行為があったことを示す証拠としては、その現場の写真や動画などがあれば確実ですが、外で肉体関係を結んでいた場合にはこれを集めることは難しいでしょう。
証拠として有力なのは、肉体関係があったことを匂わせるメールなどのやり取り、ホテルに出入りする写真、ホテルの領収書、不貞行為を自白した音声や書面などです。証拠集めに困った時には、弁護士や探偵に相談することも一つの方法です。
時効を迎えている
不法行為の損害賠償請求には時効があります。時効を迎えてしまっている場合は慰謝料を請求することができません。時効が成立するパターンとしては、「浮気の事実と浮気相手を知ってから3年」と「20年以上前の浮気」です。
第724条
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
不法行為の時から二十年間行使しないとき。
時効を止める方法としては、裁判を起こすか内容証明郵便を送るという方法がありますが、時効が近い場合には専門家である弁護士に相談するほうが良いでしょう。
浮気の慰謝料相場
浮気の慰謝料の相場は一般的に50万円~300万円程度と言われています。浮気が原因で離婚した場合の方が慰謝料は高額になりやすいです。しかしながら、慰謝料の算定は事例ごとに様々な事情を踏まえて総合的に判断されますので、以下では一般的に考慮される事項の具体例を挙げながら説明いたします。
【関連】浮気の慰謝料相場と請求方法
婚姻年数
一般的に、婚姻年数が長いほど、精神的な苦痛は大きくなると言えるので、慰謝料の額は増額されやすいです。ただし、婚姻期間が長かったとしても不貞の時点で既に夫婦関係が破綻していた、離婚に向けて別居していた場合などには、必ずしも慰謝料が高額になるとは言えません。
不貞行為の頻度
不貞行為が長期間にわたって行われている場合又は複数回行われている場合も慰謝料が増額されやすいです。逆に不貞行為が一回だけというケースでは、有力な証拠を集めることも難しく、慰謝料は低くなる可能性が高いでしょう。
子どもの有無
夫婦間に子どもがいた場合はもちろんのこと、不倫相手との間に子どもができた場合なども配偶者が受ける精神的ダメージが大きいと言えるので、慰謝料が増額される傾向にあります。
その他
上記で述べたものはほんの一例です。慰謝料の算定は画一的でないため、慰謝料を請求したいと考えている場合には弁護士に相談することをおすすめします。
浮気の慰謝料を請求する方法
慰謝料を請求すると決心した際には、やるべきことと注意すべきことがありますので、これについて説明いたします。
証拠を集める
先ほど慰謝料請求ができないケースとして「浮気の証拠がない」というものを挙げました。このことからも、まずは証拠を集めることが重要です。しかし、浮気をしている配偶者に証拠を集めようとしている事がバレると、警戒して証拠を集めにくくなる可能性があるので、証拠を集める際は慎重に行動する必要があります。
不貞行為の相手方の名前・住所を調べる
配偶者だけに慰謝料を請求する際には特に問題になりませんが、不貞行為の相手方に対して慰謝料を請求したい場合には相手方の名前と住所を調べる必要があります。これができなければ、その後の手続きを進めることができません。弁護士は弁護士法第23条による情報照会ができますので、浮気相手の電話番号やメールアドレスが分かっていれば契約者情報を調べられる可能性があります。
慰謝料を請求する
必要な情報収集ができた後は、示談か裁判かの方法により慰謝料を請求します。一般的に裁判の方が費用も時間もかかってしまうため、まずは示談での解決を試みることになります。示談の場合、基本的には当事者(及びその弁護人)のみで話し合いをして慰謝料の額を決定します。一方、示談による解決ができなかった場合には裁判によって慰謝料の額を決める必要があります。
浮気相手のみに慰謝料を請求する際の注意点
慰謝料の請求は配偶者と不貞行為の相手方の両方に対してすることができますが、そのどちらか一方のみに対して請求することもできます。たとえば、配偶者とは離婚せず、婚姻関係を継続するという選択をした場合、不貞行為の相手方のみに対して慰謝料を請求することもあると思います。
この場合、浮気の慰謝料は配偶者と不貞行為の相手方との連帯責任であることに気をつけなければなりません。つまり、不貞行為の相手方のみに慰謝料を請求したとしても、不貞行為の相手が後から配偶者に対して、求償権を行使することが考えられますので、事前に示談書には求償権を放棄する旨の記載をしておく必要があります。
浮気の慰謝料請求を弁護士に依頼した場合の費用相場
弁護士に依頼した場合の費用については一律に決まっているわけではなく、事務所ごとに費用が異なりますが、一般的には着手金が10万円~30万円、報酬金が獲得した慰謝料の10~20%が相場です。なお、事務所によっては完全成功報酬で依頼を受けているところもあります。弁護士費用に関しては、依頼前の相談時にどれくらい費用が掛かるのかをしっかりと確認しておきましょう。
まとめ
浮気による慰謝料の請求は証拠集めが難しく、また、慰謝料の額の算定も非常に複雑です。ご自身で対応するのが難しい場合は、弁護士に依頼することで慰謝料請求をスムーズに行えます。当事務所では初回30分の無料法律相談も受け付けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。