不倫慰謝料請求の二重取りはできない?事実上、二重取りができる方法とは

浮気の証拠を見せる女性

不倫をした配偶者と不倫相手のどちらも許せない場合、どちらからも慰謝料を取りたいと考えるでしょう。しかし、法律上は不倫慰謝料の二重取りはできません。

この記事では、慰謝料の二重取りについてご説明します。

 

不倫慰謝料の二重取りは原則できない

不倫慰謝料は、不倫をした配偶者とその不倫相手が連帯して支払う責任を負います(民法719条第1項)。連帯して賠償責任を負っているため、一方が慰謝料の全額を支払った場合、他方への請求はできません。

つまり、不倫慰謝料は配偶者と不倫相手のそれぞれに全額の請求ができますが、それぞれから全額を受け取る二重取りはできません。以下で説明します。

不倫慰謝料の請求できる条件

不倫慰謝料が請求できる条件は次の4つです。

配偶者の不貞行為の事実

配偶者のある者が、配偶者以外の者と自由な意思で肉体関係を結ぶことを、法律上、不貞行為といいます(最判S48.11.15判決)。不貞行為があった、または、不貞行為あったと推認できる証拠が必要です。

夫婦関係が破綻していなかった

不倫関係開始前から夫婦関係が破綻していた(たとえば、夫婦が別居していた)場合や、不倫関係が発覚しても夫婦関係に影響を及ぼさない場合は、不倫慰謝料請求はできません。配偶者の不倫によって、夫婦関係が悪化した事実が必要です。

不倫相手に故意過失がある

不倫相手への請求は、不倫相手が、交際相手が既婚者だと知っていた(故意)、または、知らなかったとしても知りえる状況にあった(過失)場合にできます。

請求期間内である

不倫慰謝料請求には時効があります。不貞行為の事実及び不貞相手を知った時から3年が経過すると慰謝料の請求が難しくなります

不倫慰謝料の時効については、こちらの記事も確認してみてください。

不倫慰謝料請求の消滅時効を解説!|ネクスパート法律事務所仙台オフィス

不倫慰謝料の相場

不倫慰謝料の相場は、次のとおりです。

不倫慰謝料には、明確な基準がありません。弁護士が交渉に介入する場合は、個別さまざまな事情や状況を考慮して金額を算定します。

不倫慰謝料の請求先

不倫は、配偶者と不倫相手とが共同で行う不法行為です。法律上、ふたりの関係は不真正連帯債務者といい、連帯して慰謝料の全額を支払う責任があります。

よって、請求人は、不倫をした配偶者とその不倫相手のどちらへも慰謝料を請求できます

不倫慰謝料請求の負担割合

不倫慰謝料を配偶者と不倫相手へ請求する場合、請求人が負担割合を決める必要はありません。たとえば、不貞行為に対する正当な慰謝料が300万円の場合、請求人はそれぞれに300万円を請求できます。しかし、一方から300万円を受け取ると、他方へ請求したり、すでに受け取っている300万円を超えて他方から受け取ったりはできません。

 

事実上、不倫慰謝料の二重取りができるケース

不倫慰謝料は、法律上、原則として二重取りができません。

しかし、事実上、二重取りができる場合があります。次の2つのケースです。

任意による支払い

配偶者と不倫相手へ全額を請求し、それぞれが任意で全額を支払った場合です。不倫発覚後、配偶者と不倫相手が連絡を取り合っていない場合や、連絡を取り合っていても話し合いの結果、合意が得られていれば可能です。

配偶者からの離婚慰謝料の支払い

不倫により夫婦が離婚する際に、不倫相手から不倫慰謝料を、配偶者から離婚慰謝料を得られる場合です。離婚慰謝料は、配偶者に不倫以外のDVやモラハラなどの離婚原因がある場合に請求できます。

不倫慰謝料の二重取りの可能性を高めるには?

調停や裁判で請求する場合は、法律上の原則に従って、二重取りはできないと判断されます。そのため、当事者間での話し合いで示談させるのが鉄則です。具体的には、不倫をした配偶者とその不倫相手のそれぞれから、配偶者(あるいは不倫相手)がいくら慰謝料を支払ったかにかかわらず、○○万円を支払うという合意を取り付けるとよいです。

 

不倫慰謝料の請求方法

不倫慰謝料の請求方法を説明します。

不倫慰謝料請求の流れ

不倫慰謝料請求の流れは次のとおりです。

示談交渉

不貞行為があった事実を証明する証拠が集まり、請求する金額を確定したら、慰謝料を請求する内容の通知書を相手方に送付します。

通知書は、内容証明郵便にするとよいです。内容証明は、誰が誰に対していつどんな内容を送付したか、いつ受領したかを証明できます。

通知書に対し、相手方から回答があれば、金額や支払方法について交渉します。話し合いがまとまったら、必ずその内容を明記した示談書を作成します。支払が長期の分割払いとなる場合は、公正証書を作成しましょう。

調停・裁判

話し合いで解決できない場合や、配偶者や不倫相手が全く交渉に応じない場合は、調停や裁判を行います。

配偶者と離婚を考えている場合は、家庭裁判所に離婚調停事件を申立て、その中で慰謝料についても話し合いができます。

不倫相手のみへ慰謝料を請求する場合は、裁判を提起します。

弁護士に依頼する

不倫慰謝料請求は、当事者間で解決できる場合もあります。しかし、次の場合は弁護士に依頼することをおすすめします。

  • 相手方と連絡が取れなくなった
  • 不貞行為の証拠はあるが、相手方が不倫を認めない
  • 相手方が不倫を認めたが、話し合いに応じない
  • 示談書を作成したいが、慰謝料以外の取り決めも行いたい

 

弁護士に不倫慰謝料請求を依頼するメリットは次のとおりです。

  • 法的なアプローチにより早期解決ができる
  • 証拠についてアドバイスがもらえる
  • 法的に有効な示談書の作成ができる
  • 相手方との直接的なやりとりがなくなり精神的負担が軽減する
  • 適正額での解決ができる

 

まとめ

不倫慰謝料請求では、原則として二重取りはできません。しかし、事実上、二重取りができる場合はあります。

二重取りができる可能性を高めるためにも、早めに弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

不倫慰謝料請求の詳細は、こちらの記事も確認してみてください。

浮気・不倫慰謝料を請求したい方へ|ネクスパート法律事務所仙台オフィス